:提言3: 「保護者の要求と家庭との連携」について
保護者の学校や教師に対する意識が、従来とは明らかに変わってきている。保護者は学校が提供するサービスに満足しない場合、学校や教師にクレームをつけることは当たり前という意識を本来の姿に戻さなければならない。日々の教育実践を意図的、計画的に進めることは、保護者に教師の教育実践の理解者、協力者になってもらうための必要不可欠な対応である。
家庭・保護者との連携について、次のキーワードで提言したい。
@)親和的な人間関係づくり A)共に語り合う
この提言を日々の教育実践の参考にしていただければ幸いである。
1 保護者との連携の進め方
(1)その理念、連携を目指す働きかけ
親和的な人間関係の構築を目指す学校運営を推進すべきである。子ども同士のかかわり合いを活性化させ、対人関係能力を育成し、心の教育を推進する。規律ある親和的な学習集団の育成によって学習を支える学級経営に励み、保護者とともに愛情豊かに子どもの変容を認め励まし合い、教育活動の創意工夫と改革に取り組む。同時に、日常の小さな見落としが大きな事故につながる前例を教訓として、危機管理の日常的な励行を徹底的に実践すべきである。この理念の基に管理職として、尊い命を預かる者の責務を果たすことが重要である。
(2)保護者との人間関係づくり
子どもの学校生活の様子はもちろん、日常の教育活動の様子はできる限り公開すべきである。個人情報の取扱いを厳重に守ることは当然として、保護者に対して、教師自身のこと、子どもの学級の状況を知らせる。
学級の様子を通信などで伝える。保護者会の運営を建設的、親和的に行う。学校行事、授業参観などで学級の様子を伝える。連絡帳の応答を工夫する。必要に応じて個別面談、電話対応を行う、PTA活動でのかかわりに努めるなど、保護者とのコミュニケーションを真摯に進める。
@) 教師自身の姿を知らせる
保護者に対して、子どもの学級の状況、教師自身のことを知らせる。どういう人間か、出身地、専門領域、家族構成や趣味、特技など、保護者が教師を身近に感じられるような情報を伝え、自分の教育方針、目指す子どもの姿を、たとえば、「授業の中でグループ学習を積極的に取入れている」とか「漢字と基礎的な計算は小テストで小まめにその定着を確認している」というように、わかりやすく、しかも具体的に知らせることが大切である。
A) 学級の様子の開示
学級の子どもたちの様子・状況を保護者がイメージできるような内容で伝える。保護者は授業だけでなく、休み時間や給食時など普段の学校生活の様子を見たいし、自分の子どもは全体の中でどのような位置にいるのかが知りたいのである。給食の献立で好きな献立は何かを子どもたちからアンケートをとったり、七夕まつりに短冊に書かれた「願いごと」を特集したりすれば、うちの子どもはどうか、夕食時などの話題とし聞くことができる。
2 保護者個々との関係づくり
個々の保護者との人間関係づくりに「連絡帳の活用」が効果的だ。創意工夫活用は、小学校高学年以上では意外に少ない。欠席確認のサインだけであったり、保護者への最初の報告内容が問題行動であったりしては、連携どころではない。
欠席の場合、休んで分らない家庭にその日の学級の出来事を伝えれば、保護者は安心する。更に、月に一回程度でも良いから、教師が、最近の子どもたちの様子や良くなった点を、連絡帳で報告すれば保護者は安心し、学校への信頼はグンと深まる。多忙な中でも、子どもの様子を知って安心する保護者の願いと教師の願いが見事に噛み合った連携の基本的な実践となる。
これ以外にも、保護者との連携のためのさまざまな工夫を取り入れる。保護者は教師に親しみを感じて、「話を聞いてもらえる、自分の子どもが常に気に留めてもらっている」との思いを強くする。我が子が公平に扱われていると感じ、学校と教師に協力的になる。
3 保護者同士の人間関係づくり
母親も仕事をもち忙しい方が多くなってきた昨今、数少ない保護者会への出席もままならない。ところが、すべての教師が保護者会の進め方に創意工夫を凝らしているであろうか。ただ顔を合わせただけ、ありきたりの話しだけでは時間の無駄と感じられ、参加者はどんどん少なくなり、絶好の機会を逸することになり兼ねない。大事な観点としては、@いろいろな相手と情報交換ができる A家庭教育の問題を率直に語り合うことができる、この2点を踏まえて、計画的に実施し、保護者と教師の楽しい語らいの場とすることが何より大切である。
3-1) 教師自身が自らの失敗談などを交え、本音で語り合えるよう、リーダーシップを発揮する。
3-2) 事前に話題やテーマなどを学級通信を使って打ち合わせ、保護者の関心を高める。
3-3) 当日の実際の語り合いでは、保護者全体では集団が大きすぎるので、4人ぐらいの小集団に分けて、フリートーキングの形式で語り合えるようにすれば、会話も弾むであろう。また4人の構成も顔見知りではなく、普段はあまり顔を合わせない保護者同士にする。子どもの班の保護者同士にするなど、メンバー構成を教師がリードすることが大切である。
3-4) 各グループで出た話題を全体に短く発表し合い、その中でのポイントを全体で語り合うと、自分の思いが語られ、ほかの保護者の話しも聞けて、短時間で有意義な時間になるであろう。
4 結び
地域住民との人間関係が希薄になってきた昨今、教師には人間関係づくりをリードしていくことが求められている。保護者同士の人間関係が深まれば、学級のことに関心も深まる。何か問題が起きた場合でも、子どもたちの関わりの中でその出来事を捉えてもらい易くなり、語り合って皆で解決していこうという雰囲気が生まれる。保護者とよく語り合い、悩みや相談、訴えに耳を傾け、親身になって受容し共感する。教師批判、保護者同士の対立はなくなる。
保護者に最初から学校の協力者になってもらうことを期待するのではなく、協力者になってもらうための働きかけが学校や教師に求められている。教師が自分の仕事に誇りをもって取り組めば、保護者との強い信頼関係を築くことができる。
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