提言110:教員の「働き方改革」と児童生徒に向き合う授業の創造

 

 

 松野博一文部科学大臣は、平成29年6月22日、中央教育審議会(以下「中教審」という)の総会に出席し、「教員には生徒指導や部活動など多様な期待がある一方、長時間勤務という看過できない深刻な状況がある」と述べた。そして、長時間勤務の解消が課題になっている教員の「働き方改革」に向けた対応を検討するよう、諮問書を北山禎介中教審会長に手渡した。

 

写真:文科大臣から諮問書を受け取る中教審会長

増えていることが明らかになった。

 教員の「働き方改革」を巡っては、政府の教育再生実行会議でも、長時間勤務の原因となっている部活動について、学校単位から地域単位での活動に転換を図ることを求める提言がまとめられている。

 本会ホームページ「提言108:今、問われている部活動の在り方を考えよう」では、「教員が児童生徒と向き合い、充実した学校教育を持続していくためには、教員の勤務時間を正常化することが最も重要である」と提言した。

 中教審は今後の議論を通じて、教員の勤務内容の見直しや地域との連携、勤務実態に合わせた処遇改善策、児童生徒の教育を巡る学校と家庭、地域の役割分担も含め、教員の「働き方改革」への有効な手だてを示せるかが注目される。

 文科省は、中教審の答申を踏まえ、教員の「働き方改革」の緊急対策をまとめることになる。教員の「働き方改革」によって、児童生徒に向き合う授業の創造を図ることは、喫緊の課題である。このことについて、筆者の見解を述べてみたい。

 

1.中教審総会における副会長・委員等のマスコミ報道

 中教審の総会において、小川正人副会長は、「教員の仕事の範囲があまりにも広がりすぎている。法制度の見直しを図ったとしても、勤務自体の削減がなされなければ結局サービス残業などが残ってしまうだろう。第1に勤務削減に取り組むべきだ。教員の給与について定めた“給特法”で、残業が教員の自発的行為とされていることに関して、“勤務の規制整備”をしていく必要がある」、他の委員からも、「教員に時間外手当の支給を認めていない教職員給与特別措置法(給特法)が“無制限の時間外労働の原因になっている”として、廃止も含めた見直しを検討すべきだ」、「学校現場で何が無駄なのか、民間のコンサルトを入れてみてはどうか、医療現場のように、学校現場にも教員だけではなく様々な専門家を入れるべきだ」などの意見が出されたと、マスコミによる報道が続いた。

 このマスコミ報道によって、教員の「働き方改革」についての関心は、教育界や関係機関をはじめ、多くの人々にも広がり、喫緊の課題となっている。

 教員の長時間勤務を根本から改善していかなければ、次世代を担う児童生徒の育成に多大な影響を及ぼすことになる。また、学校と地域・家庭との役割分担や、部活動指導員、事務職員、SSW(スクールソーシャルワーカー)といった教員以外の人材との連携促進、ICTを活用した負担軽減策などの検討も求められている。

 弁護士ドットコムNEWS(平成29年06月22日付)は、教員の長時間労働の問題等、学校現場における働き方改革の諮問に当たって、松野博一文部科学大臣は、具体的には「以下の3点の審議を求めた」と詳細に報じた。

(1) 学校が担うべき業務について

  ① 今後も学校が担うべき業務は何か

  ②  学校や家庭、地域、行政機関、それぞれの役割分担のあり方と連携の推進

(2) 教職員や専門スタッフが担うべき業務について

  ①  教員が教育の専門職として指導に専念できるための業務のあり方

  ②  ICTの活用も含めた業務改善

  ③  事務職員やSC(スクールカウンセラー)、部活動指導員などとの連携

(3) 学校の組織運営のあり方と業務のあり方について

  ①  学校の特性を踏まえた、業務時間制度や管理のあり方

  ②  業務状況を踏まえた処遇のあり方

  ③  業務時間外に自主的な長時間業務を行わざるをえない実態の改善

  ④  副校長や主幹教諭、指導教諭などの役割や主任のあり方

  ⑤  学校組織運営の体制

  ⑥  管理職の意識改革も含めた学校のマネジメント体制

  ⑦  校務などの合理化の方法

などである。

 諮問の具体的な内容を見ると、松野文部科学大臣が「看過できない状況だ」と述べたように、どれも早急に改善策を講じなければならない課題ばかりである。その中で最も急を要する課題は「今後も学校が担うべき勤務は何か」を明確にすることである。

 教員の「働き方改革」の諮問とそれを踏まえた中教審による答申は、「OECD国際教員指導環境調査」、「教員勤務実態の集計結果(速報値)」後、速やかに取り組むべきであったと考える。教員の「働き方改革」の諮問が早ければ、中教審の答申も早められ、教員の勤務に関する価値観や意識の変革などにも影響を及ぼしたと考えるからである。

 教員の「働き方改革」により、教員が児童生徒ときちんと向き合う時間が生み出され、教材研究をはじめ、授業研究などを通じて、「主体的・対話的で深い学び」を掲げる次期学習指導要領を確実に実施するための授業の創造ができると考える。

 

2.学校現場における勤務の適正化に向けて

 文科省は、平成28年4月に「次世代の学校指導体制にふさわしい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース」を省内に設けて検討を行ってきた。そして、平成28年6月17日、本タスクフォースの報告をとりまとめ公表した。

 公表された長時間労働の働き方改善には、「業務改善を断行するためには、働き方そのものの価値観の転換が必要」と記述されている。

  教員の多くは、「児童生徒たちのために」という大義名分を最優先する傾向がある。したがって、長時間の勤務を抱えても、表立って不平も言わずに長時間勤務に携わり、間に合わなければ自宅に持ち帰って黙々と勤務を支えているのが実状である。今やその頑張りは、既に限界に達している。これまでの働き方に関す教員の価値観や意識の変革を、根本から見直さない限り、教員の「働き方改革」を断行することは極めて難しい。また、従来の固定化された献身的な教員像を前提とした学校の組織体制では、質の高い学校教育を持続的に発展させることも困難である。

図表:小中学校における1か月の労働時間と過労死ライン

 全国の公立小中学校の教諭約4500人を対象とした「連合総研」の調査(平成29年1月16 日付)によると、週に60時間以上働く小中学校の教員の割合が70~80%に上ることが、明らかになった。医師や建設業、製造業など他業種より格段に高い割合である。特に運動部の顧問の教員は出勤が早く、午前7時前に出勤する教員が15%、午後9時以降に退勤する教員が15%に上った。単純に比較はできないが、

徒指導や部活動など多様な期待がある一方、長時間勤務という看過できない深刻な状況がある」と述べたことは、教員が本来の勤務である教材研究や授業改善を行えず、児童生徒と向き合う時間が確保できていないことを公式に認めたことになる。

 平成29年6月9日、閣議決定した今年の「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太の方針)にも「長時間勤務の早急な是正へ年末までに緊急対策をまとめる」とし、教員の働き方改善を盛り込んだ。しかし、教員定数を大幅に増員するとともに、教員の勤務の範囲や量そのものを見直さない限り勤務時間を縮減するのは難しいと考える。

 学力の向上、いじめや不登校への対応、特別支援教育など、教育課題が増えているにもかかわらず、それに見合うだけの教員配置がなされていないのが実状である。教員定数の改善も急務である。勤務が増えれば、それに見合う人員の配置は当たり前のことである。

 文科省の平成29年度予算は5兆3,097億円で、平成28年度と比べ86億円減少した。義務教育費国庫負担金(注2)は、教員定数の改善策として、65億円増(3060人増)、教員定数の自然減(児童生徒数減)により、67億円減(3100人減)、結果的に2億円の減少である。児童生徒数が減少したとしても、勤務内容はむしろ増加していることを本気で考えているのか疑わざるを得ない。

 教員の「働き方改革」を推進するためには、国・都道府県・市町村教委と学校などが、改革の明確な目標設定と適切なフォローアップ・支援により、実効性を確保していかなければならない。

(1)適正な勤務分担と教委等からの支援

 教員の勤務については、責任を明確にし、適正な勤務分担、学校運営の円滑化などを視点として、勤務の改善を図るとともに、教員の「働き方改革」を進めることが重要である。

 「提言108:今、問われている部活動の在り方を考えよう」で、記述したように、教員が最も負担に感じている勤務は、小中学校とも「保護者・地域からの要望・苦情への対応」(小学校84%、中学校82%)、「国や教委からの調査やアンケート(小学校83%、中学校80%)」などである。

 学校に対する保護者や地域住民の意見・要望も多様化しており、教員の勤務の多忙化に拍車をかけている。このような状況を改善していく1つの方策として、学校と保護者・住民との間に生じた学校だけでは解決が困難な課題については、県教委等に相談し解決を図るようにしたい。例えば、都教委には「学校問題解決サポートセンター(東京都教育相談)」が設置されており、教員や学校の「困難な課題や問題」対して、支援を受けることができるようになっている。また、都道府県教委は、高度な知識や経験に基づく実践力のある退職教員等を学校に配置し、保護者や地域住民とじっくり話し合ったり、対応してもらったりして、理解を得るようにしていきたい。このような取組によって、教員の勤務縮小に繋げられると考える。

 国や教委からの調査やアンケートなどは、必要最小限に止めるよう、国や教委への理解を求めていくことも必要である。

 長時間勤務を是正し、教員が自分の時間を持つことによって、人としての幅を広げ、よりよい授業の創造に繋げるという意識の変革とともに、そのことにも価値観を見出していきたいものである。

 給食費等の徴収管理勤務から教員を解放したい。給食費や教材などの徴収勤務は、教員の勤務とは考えにくい。学校給食費等の学校徴収金会計勤務を、学校を設置する地方自治体が自らの勤務として行うための環境整備を推進することが重要である。

(2)教員定数の大幅な増員

 全国の公立小中学校では、担任や部活動の指導をしながら非正規で働く「臨時的教員(注3)」が4万人以上と教員定数の約7%を占めている。正規教員と同じように、1か月80時間以上の勤務を抱えている臨時的教員も少なくない。

 地方公務員法では、正規採用を原則としており、臨時的教員はあくまでも例外的な扱いとしている。採用期間も1年に限られている。このようなルールに合わせるため、県教委等は上限の1年を超えないよう、1年になる前にいったん解雇し、その後直ぐに再雇用する方法をとっている。県教委の中には、原則として夏休み中の1か月間、臨時的教員を解雇し、始業式の日に再び採用することにしている。解雇中(夏休み)に学校行事の引率や生徒指導、部活動を行っても無給である。また、退職手当や扶養手当も支給しない県教委もある。都道府県教委が将来の児童生徒の減少に備え採用数を抑えている影響は極めて大きいと考える。

 臨時的教員の勤務時間や勤務内容は正規教員とほぼ同じである。授業を行うだけではなく、学級担任や校務分掌も担当する。したがって、長時間勤務も正規教員とほとんど変わらない。しかし、給与は正規教員の62%程度である。

 教員の「働き方改革」においては、臨時的教員に対しても十分な配慮が必要であると考える。

(3)教員が担うべき勤務の見直しと勤務の縮減

 「定時退勤日」等を設けたとしても、教材研究や授業の準備、生徒指導といった勤務に追われる状況は変わらないと考える。また、数多くある会議や事務作業の見直しなど、各学校、各教員で勤務を効率化する努力は必要であるが限界に達している。したがって、教員の勤務の量そのものを徹底して、見直さない限り勤務時間を縮減するのは難しい。

 校長や副校長・教頭は、学校や教員の勤務の見直しを推進し、教員が担うべき勤務に専念できる環境整備と学校の指導体制を一体的に推進することに努めなければならない。

 児童生徒の未来のために、「次世代の学校」を創生するためには、学校の指導体制の充実と教員の長時間勤務の是正を図ることが不可欠である。それには、学校や教員の勤務の大胆な見直しを着実に推進し、教員の勤務の適正化を促進し、教員が児童生徒と向き合える環境整備をしなければならない。

(4)徹底した勤務の縮減

  教員が担うべき勤務に専念し、児童生徒と向き合う時間を確保するためには、教員がこれまで携わってきた勤務を不断に見直し、必要な体制を強化することが重要である。

 教員の「働き方改革」を推進するためには、国・県教委等・学校が改革の明確な目標設定と適切なフォローアップ・支援により、実効性を確保することが必要である。

 具体的には、長時間勤務是正のための周知・啓発キャンペーンをしたり、学校組織全体としての勤務改善のPDCAサイクルを通じたりして、先ずは、教員の勤務に対する価値観や意識改革を図ることが重要である。また、どの程度の効果があるかという視点で見直すことも忘れてはならない。

 長時間勤務の改善は、勤務時間を縮減するだけではなく、重点化することによって、何を優先し重点を置くのは何か、何を縮減するのかなどについて、教員間で十分話し合うことが何よりも重要である。

(5)部活動の負担軽減

 本会ホームページ「提言108:今、問われている部活動の在り方を考えよう」でも記述したように、文科省(平成29年3月14日付)は、各都道府県教委教育長等に対して、「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)」を出した。省令は平成29年4月1日から施行されている。

 通知の主な内容は、「校長は、部活動の指導に外部指導員を顧問に命ずることができること。部活動指導員は、学校の教育計画に基づき、生徒の自主的、自発的な参加により行われるスポーツ、文化、科学等に関する教育活動(学校の教育課程として行われるものを除く)である。部活動において、校長の監督を受け、技術的な指導に従事すること。…」などである。

 この省令によって、スポーツ等に詳しい学校外の指導者が、学校職員と位置付けられ、「部活動指導員」になることができるようになった。教員の負担軽減と部活動の安定運営などのため、中学校・高等学校の部活動で技術的な指導をするほか、大会へ引率したり、顧問に就いたりできるようになった。

 各学校では、外部指導者を顧問に委嘱し、教員の「休養の明確な設定」と「働き方改革」を通じて、部活動の運営の適正化を促進することが重要である。

(6)学校指導体制の整備

教育課題に対応した教職員定数の拡充や、SC、SSW(スクールソーシャルワーカー)の配置拡充が必要である。また、マネジメントを担う事務職員等の定数改善を図ることも重要である。

 

4.静岡県吉田町の教育プラン

けるのは子どもたちだ」など、不満が出ている。また、児童生徒からは「夏休みが短くなるのは嫌い」とか、「宿題がなくなるからいいかも」など、様々な声が上がっている。

 一方、小学校のある女性教諭のように、「放課後が長くなれば余裕をもって教材研究や児童と向き合える時間ができる」と歓迎する声もある。文科省によると「教員の“働き方改革”を自治体あげて取り組むのは珍しい(初等中等企画課)」等、様々な声が上がっている。

 公立小中学校の長期休みの日数は、学校教育法に基づいて、自治体の教委が決めることになっており、この方針は平成29年2月に開かれた吉田町の総合教育会議で了承されている。

 吉田町教委によると、平成28年度、町立住吉小学校教諭の時間外勤務は月平均で57.6 時間、吉田中学校ではで90.1時時間(土日の部活動含む)である。次期学習指導要領改定案では、小学校3~6年生の授業時間が年間35コマ増えるため、全国的に対応が課題となっているなかで、年間の授業日数を220日以上に増やすことによって、月平均の時間外勤務が小学校で40時間以内、中学校では60時間以内に減らすことができると町教委は見込んでいる。土曜日に授業は行わない。

 午前中で授業が終了する日が生まれ、教員は授業準備や研修時間が確保され、質の高い教育へ繋げていくことを狙いとしている。従来の補充学習や公設学習塾を柔軟に展開し、放課後の児童クラブの開始時間も前倒しで行うとのことである。田村典彦町長は「教育プランに基づき、改革を進めたい」と意欲的である。

 県教委によると、平成28年度、吉田町立小中学校の授業日数206日は県内で最も多い。平成29年度は小中学校とも210日に伸ばす予定である。

 吉田町教委は、新教育プランを児童生徒と保護者、教職員の「3者共益プラン」と表現している。児童生徒の学習環境を整えるため、7月までに町内全小中学校の普通・特別教室にエアコンを入れ、給食日も拡張するとしている。

 吉田町の各小中学校が、新学習指導要領への対応を先取りした教育プランの創造を目指して、児童生徒としっかり向き合った授業のデザイン等、主体的、創造的に取り組んでいくことを期待したい。

 

5.教員の「働き方改革」支援

 日本経済新聞(平成29年7月13日付)は、平成29年4月4日、「文科省は学校経営や職場改善で実績のある21人・団体を学校業務改善アドバイザーに委嘱した。県・市教委員の求めに応じて教員の“働き方改革”のノウハウをアドバイスしてもらい、教員の“働き方改革”を推進するのか狙いである」と報じた。

 アドバイザーに選ばれたのは、勤務改革に取り組むNPOの代表や、学校経営に関する教育研究者たちである。

 5月中旬までに全国の都道府県・政令都市の教委からアドバイザー派遣を求める事業計画書を出してもらい、6月以降に派遣することになった。既に教委からアドバイスを受け、教員の「働き方改革」推進に生かされている学校があるもかも知れない。

 一方、県・市町村教委の中には、既に学校における勤務改善の支援や人員配置等の取組を実施している教委もある。

 未来を担う児童生徒を育むためには、教員一人一人が勤務と生活のバランスを考え、自分自身の時間を創って、リフレッシュし元気な姿で児童生徒に接する環境を整えることが必要である。勤務改革によって生み出された時間を児童生徒と過ごしたり、授業準備に当てたりするなど、児童生徒と向き合う時間としたい。

 教員は児童生徒が生涯を豊かに生き抜けるように支える誇り高い職業である。専門職としてのプライドを守り続けてほしいと考える。そのためにも学校・教委・地域が一体となって、教員の「働き方改革」を進めることが必要である。

 

♦ 注釈

 注1 タスクフォース:具体的な特定の目的のために一時的に編成される部局や組織

 注2 義務教育費国庫負担金:公立の義務教育諸学校の教員の給与について都道府県が負担した経費

   の1/3を国が負担する。

 注3  臨時的教員:地方公務員法の規定で、1年以内の期間限定雇用される教員、教員免許を持ってい

   れば、各教育委員会の採用試験に合格していなくとも良い。

 

♦ 参考引用文献

 1 教員の「働き方改革」諮問書

 2 弁護士ドットコムNEWS(平成29年6月22日付)

 3 連合総研(平成29年6月1日 月刊レポート)

 4 経済財政運営と改革の基本方針2017(文科省)

 5 平成29年度文科省予算(文科省)

 6  教育委員会等による学校への支援(東京都教育委員会)

 7  静岡県吉田町ホームページ

 8  朝日新聞・読売新聞・日本経済新聞・東京新聞

 

 

                                                                平成29年7月20日

 教員の「働き方改革」における緊急対策は、文部科学省(以下「文科省」いう)が「次世代の学校指導体制にふさわしい教職員の在り方と勤務改善のためのタスクフォース(注1)」の報告(平成28年6月13日付)や「平成28年度の教員勤務実態調査結果の集計(速報値)」などを踏まえて、諮問されることになったと考えられる。

 教員勤務実態調査結果の集計では、平日の平均勤務時間は、小学校教諭が11時間15分、中学校教諭が11時間32分で、いずれも平成18年度の前回調査よりも30~40分程度

平成23年に労働政策研究・研修機構が調べた医師の40%を大きく上回ったほか、連合総研が平成28年に調査した建設業の13.7%、製造業の9.2%、運輸・情報通信業の9.8%を大きく上回っている。

 

3.長時間勤務の解消

 教員の長時間勤務の実態は、平成28年度の教員勤務実態の集計で既に明らかになっている。しかし、松野博一文部科学大臣が、今回の諮問に当たって、「教員には生

 平成29年6月24日、読売新聞は、「夏休み10日に短縮へ」という見出しで、静岡県吉田町の教育プランについて報道した。

 吉田町の教育プランによると、「町立小中学校の授業日数を平成30年度、夏休みなど長期休暇の短縮で平成28年度の年間206日から220日以上に少なくとも14日間増えることになる。

 大幅に授業日を増やすことによって、1日あたりの「授業時間を減らす日」を設け、教員の多忙化解消と児童生徒の学力向上を目指し、保護者の多様な教育ニーズへの対応も図るということである。しかし、このプランの説明会は6月から始まったが、保護者からは「夏休みが減れば、息子はサッカーチームの練習に参加ができなくなる」、「大人に振り回され、被害を受