提言117:学校や職場で起こる性被害を防ぎ、人としての尊厳を確立しよう

 

はじめに

 2018年1月12日、NHKの情報番組「金曜イチから」(金曜日19:30)で、「スクールセクハラ 声をあげはじめた被害者」が放映された。

 番組内容は、「学校で起きる性被害(スクールセクハラ)は、昨年度わいせつ行為で処分を受けた教員数は、過去最多の226人(懲戒処分197人、訓告等29人)に上る。しかし、この数は氷山の一角とも言われ、被害の実態は隠されている。背景には、教員と教え子との間の“力関係の大きな差”“被害が表に出にくい構造”がある。一方、性被害が子供に与える影響は大きく、卒業後何十年も苦しむ被害者もいる。どうすれば被害を防げるのか、イチから考える。」であった。

 同行為で処分を受けた教員の数は1990年代と比べ10倍増である。これまで隠されがちだったわいせつ事件の告発が増えたためと考えられるが、教員によるスクールセクハラは児童生徒の尊厳を著しく損なう行為である。

 他方、2017年10月5日、数々のアカデミー賞受賞映画を手掛け大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein )のセクハラ疑惑を、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)が報じたことに端を発し、性暴力を告発する動きが世界中で広がった。

 本稿では、学校及び職場で起きている性被害の実情を記述するとともに、性被害が起きる要因や性被害の防止に関して、筆者の見解を記述する。

 

I 学校で起きる性被害(スクールセクハラ)
 2017年12月27日、文部科学省(以下「文科省」という)は、「2016年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」の結果を公表した。公表された調査項目は8項目である。その中の1項目が、「教育職員の懲戒処分等(交通違反・交通事故、体罰、わいせつ行為等)」である。

 スクールセクハラは児童生徒の人権を侵害し、尊厳が損なわれる恐れのある重大な問題である。したがって、行政や学校はスクールセクハラを受けた児童生徒を一刻も早く救済し、その尊厳を回復し、守っていかなければならない。

 学校においては、スクールセクハラを受けた児童生徒の「救済」と「尊厳」を学校経営の重要事項の一つに掲げ、持続的に推進していくことが重要かつ必要である。

 

1 2016年度公立学校教職員の人事行政状況調査について(概要)

 文科省は、教職員の人事管理に資するため、公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校などにおける教職員の人事行政の状況について調査をした。47都道府県及び20指定都市の計67教育委員会(以下「教委」という)を通じて、公立の小中高校、特別支援学校などの校長や副校長・教頭、教諭ら計約92万人を対象にした調査である。調査項目は次の8項目である。

 ① 精神疾患による病気休職者

 ② 教育職員の懲戒処分等(交通違反・交通事故・体罰・わいせつ行為等)

 ③ 指導が不適切な教員の認定及び措置等、条件付採用

 ④ 人事評価

 ⑤ 校長、副校長・教頭、主幹教諭、指導教諭の登用状況

 ⑥ 教員出身でない者の校長等の任用状況

 ⑦ 教育職員の再任用状況

 ⑧ 教育職員の育児休業及び介護休暇の取得状況

  などである。

 文科省は、本調査における「わいせつ行為等」について、次のように定義している。

 ◆ 「わいせつ行為等」とは、わいせつ行為及びセクシュアル・ハラスメントをいう。

 ◆ 「わいせつ行為」とは、強姦、強制わいせつ(13歳以上の者への暴行、脅迫によるわいせつ行

   為及び13歳未満の者へのわいせつ行為)、公然わいせつ、売春、痴漢、のぞき、陰部等の露

   出、青少年保護条例違反、不適切な裸体、下着姿等の撮影、わいせつ目的をもって体に触れるこ

   となどをいう。

 ◆ 「セクシュアル・ハラスメント」とは、他の教職員、児童生徒等を不快にさせる性的な言動など

   をいう。

などである。

 

2 わいせつ行為等に係る懲戒処分等の状況

 2016年度において、わいせつ行為等により懲戒処分等を受けた教員は226人で前年度の224人より2人増、2年連続で過去最多を更新したことになる。最も重い懲戒免職は129人で、前年度より11人増えた。

 文科省の担当者は「わいせつ行為や体罰について、教委の間で厳しく認知して対処する姿勢が定着し、件数増につながっているのではないか。」と指摘している。しかし、隠れているわいせつ行為等は相当数あると思われる。隠れているわいせつ行為等を顕在化させるとともに、抜本的な対策を講じることが重要かつ必要なことと考える。

(1)わいせつ行為等に係る被処分者の状況

  わいせつ行為等に係る被処分者の教員226人の内訳は、免職129人、停職50人、減給15人、

  戒告3人、訓告29人などである。

(2) わいせつ行為等被処分者の年齢層

  2016度のわいせつ行為被処分者を年齢別に整理をすると、下記の表1のように、被処分者の年

  齢にかかわる特徴は見られず、全ての年齢層で発生している。

 

表1 2016年度被処分者の年齢層(出典:文科省)

恋愛感情と勘違いして、スクールセクハラを起こしかねないという実態がある。常に教員としての誇りと倫理観をもって欣然とした態度で臨む必要がある。

 児童生徒を預かり、守り、健全に育むべき立場の教員が、児童生徒の言動を恋愛感情と勘違いして、スクールセクハラを起こすことは、責任ある教員として決して許されることではない。

 50代以上の被処分者は57人で最も多い。管理職も含め若手教職員を指導育成すべき立場にある40・50歳代のベテラン教員にも、スクールセクハラやセクシュアル・ハラスメントを起こしている実態が明らかになった。

 教員が、自己を見失い、スクールセクハラやセクシュアル・ハラスメントを起こすのは、教育者としてあるまじき行為であり、児童生徒、保護者などを裏切る行為である。児童生徒の尊厳をないがしろにする教員失格者として厳しく処分されなければならない。

(3)2016年度わいせつ行為等に係る被処分者の校種別状況

  2016年度の被処分者の所属する学校種については、被処分者の中で最も多かったのは中学校が

  79人で、全体の34.9%を占めている。 続いて小学校は68人で、全体の30.0%を占め、

  前年度より18人の大幅増である。

 

表2 被処分者の所属する学校種層(出典:文科省)

 被処分者の226人は、全教員92万58人に対して0.02% で、一部の教員による不祥事である。しかし、被害の実態が隠れてしまっている教員を含めると、かなりの数に増えるものと推測される。

 大多数の教員が築き上げてきた教育に対する信頼を著しく失墜し、本来の教育活動に専念すべき環境が大きく損なわれたことは紛れもない事実である。一方、スクールセクハラを受けた児童生徒の心の傷や教員不信は計り知れないものがある。また、人間不信に陥り、長期間あるいは生涯を通じて幸せな人生を全うできないという恐れもある。

(4)わいせつ行為等による処分の理由

  226人の被処分者の内訳は男性223人、女性3人、合計で2015年度から2人増えた。ま

  た、懲戒免職された教員は129人で過去最多となった。

 

図表1 わいせつ行為等の態様(出典:文科省)

できるのか、また、児童生徒とともに、「主体的・対話的で深い学び」を継続して進められるのか甚だ疑問である。

 

図表2 わいせつ行為等が行われた場所(出典:文科省)

非常に嘆かわしいことである。

 2017年9月5日、毎日新聞は、「子供へのわいせつ問題を起こした教員の処分情報の共有に向け、文部科学省は来年度から、都道府県教育委員会間で運営する“教員免許管理システム”の大幅改修に乗り出すことを決めた。」と報じた。

 スクールセクハラ問題で免職や停職になった事実を伏せ、他の地域で教員に再雇用されるのを防ぐために必要な施策であると考える。スクールセクハラを起こした教員は二度と学校に戻してはならない。「教員免許管理システム」を早急に構築し、児童生徒の尊厳を守っていかなければならない。

 

 

3 スクールセクハラの根絶に向けて

 教職員によるスクールセクハラやセクシュアル・ハラスメントは、懲戒処分の対象になるだけでなく、他の行為とは比べものにならないほど、厳しい社会的批判にさらされる。また、職責の重大さから、教育や学校全体に対する信用を著しく失墜することになる。さらに、刑事、民事上の厳しい責任を負うことになったり、家族や同僚等の周りの人々に多大な迷惑をかけたりすることにもなる。特に家庭崩壊に至るとともに、自分の子供の将来にも大きな影響を与えてしまう可能性があることを十分に認識する必要がある。

(1)学校の果たすべき役割

  学校は児童生徒一人一人の夢や希望を実現できるよう教育活動を行う場であり、何よりも児童生徒

 の安心・安全や人権が尊重されなければならない。また、教育活動の直接の担い手である教員が教育

 活動に専念できる環境が確立されていなければならない。

  しかし、近年一部の教員によるスクールセクハラが原因で、大多数の教員が築き上げてきた教育に

 対する信用が著しく失墜し、本来の教育活動に専念すべき環境が大きく損なわれようとしている。

  学校の果たすべき役割について、教職員一人一人が真摯に考え、児童生徒の尊厳を最大限に重視し

 教育の創造に取り組むことが、今、最も重要かつ必要なことである。

(2)スクールセクハラが起こる背景

  スクールセクハラが起こる背景には、「教員と児童生徒との圧倒的な力関係の差」「被害が表に出

 にくい構造」「教員としてのプロ意識の希薄と倫理観の欠如」などがあると考える。

 ① 圧倒的な力関係の差

   児童生徒は教員に「逆らえない存在」であると考えられる。教科等の個別指導、部活動、内申書

  等、教員のもっている権力を教員自身が明確に認識していないように思  われる。したがって、

  児童生徒の本心が教員を嫌いにもかかわらず、抵抗することができないという状況に多くの教員が

  気付いていないことが課題であると考える。

   部活動で指導している教員が女子生徒を個室に呼び出し、スクールセクハラを行うのは、児童生

  徒を支配しようとする力関係の大きな差によって起こるものと考える。

   また、教員と児童生徒という関係は主従関係になりやすい。つまり、学校という組織は権力が一

  方向に働きやすい構造になっているからである。

   学校は権力を利用して児童生徒をコントロールすることがたやすくできる環境にある。このこと

  を教員一人一人が自覚し、かつ真摯に受け止めていかなければならない。熱心な教員であっても自

  分自身でも気付かないうちに何かの契機で、スクールセクハラを起こしてしまう危険性があること

  を、しっかりと認識することが重要である。

 ② スクールセクハラが表に出にくい構造

   学校という閉じられた空間は、外部の目が届きにくい。また、スクールセクハラを起こした教員

  に対して、「例外的な教員が起こした例外的な不祥事」という認識が校長をはじめ管理職教員に強

  いのではないかと考えられる。さらに、いじめ問題などと比べ、相談窓口が整備されていないため

  隠蔽されがちである。また、校内で不祥事が発生した場合、大きな抑止力となり得る、職場におけ

  る緊密なコミュニケーションの体制が整っていないことにも課題がある。

 ③ 教員としてのプロ意識の希薄と倫理観の欠如

   教員には、教育者としての使命感、人間の成長・発達についての深い理解、幼児、児童生徒に対

  する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、広く豊かな教養などが資質能力として求められてい

  る。しかし、スクールセクハラを起こした教員は、教員としてのプロ意識が希薄であり、倫理観が

  著しく欠如していると言わざるを得ない。改めて、教職員の資質能力の向上と使命感や倫理観を

  培っていかなければならない。

(3)児童生徒が教員に「NO」と言える状況づくり

  児童生徒の多くは、熱心な教員であればあるほど「児童生徒と同じ目線で教えてくれている。」と

 思っているに違いない。それはそれとして素晴らしいことである。しかし、児童生徒からみて教員は

 「逆らえない存在」であることを認識していない教員が多いと思われる。つまり、児童生徒が理不尽

 だと思っても、教員にはなかなか「NO」と言えないからである。

  児童生徒が教員に何か要請された場合、嫌なことであれば、「NO」と言える状況を、教員は十分

 に認識したうえで、児童生徒に関わっていかなければならない。また、学校の組織としても確立して

 おくことも必要である。

(4)教員のスクールセクハラ研修

  スクールセクハラを防ぎ、児童生徒の尊厳を確立するには、教員に対する研修が最も重要である。

 研修で重視すべきことは、「日本国憲法をはじめその他の法令においても“個人の尊厳”を基本原理と

 していること」「教員は児童生徒から見て絶対的な権力を有する立場であることを自覚すること」

 「児童生徒を逆らえない立場に追いやってはならないこと」などについて、認識を深めるとともに、

 児童生徒に対しては常に毅然とした態度で指導に当たっていかなければならない。それには、継続的

 な研修の推進によって、全教職員が情報の共有を図っていくことが重要である。その際、養護教諭の

 果たす役割は極めて大きいことを、校長、副校長・教頭はしっかりと認識しておくことが重要である。

  また、校長や教委に対しては、これを隠すのではなく、事実を正しく把握して、毅然とした姿勢で

 取り組むことを求めていきたい。隠蔽が発覚した場合、かなり厳しい処分と再び教職に復帰すること

 は難しいことを徹底して指導、周知しなければならない。

 

Ⅱ 性暴力を告発する動きが世界中で拡散

  「恋に落ちたシェイクスピア」や「英国王のスピーチ」など、ヒット作品を数多く手がけた米ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein) が大勢の女優や従業員にセクハラや性暴力を繰り返していたことが、The New York Times(2017年10月5日付)と、米国で発行されている雑誌「The New Yorker」(2017年10月12日付)の衝撃的な報道を契機に発覚した。

 1998年「恋に落ちたシェイクスピア」で第71回アカデミー賞主演女優賞や第56回ゴールデングローブ賞主演女優賞などを受賞したグウィネス・パルトロウやアンジェリーナ・ジョリーを含む30人以上の女性たちによって、リアルなセクハラが告白されたからである。

「泣き寝入りせず声を上げよう」という意思の象徴となったのが、SNSに投稿する動きが世界中に広がっていった。

 女優アリッサ・ミラノが、セクハラや性暴力を受けた女性がSNSのハッシュタグ「#Me Too」(注1)と書けば問題の重大さを皆に分かってもらえると、呼び掛けたからである。

 女性たちの告発は米映画業界から、国境を超えて世界的なうねりとなっている。その数はThe New York Timesの記事が出された10月5日後から増え続けている。

 

1 Harvey Weinsteinによるセクハラ

 Harvey Weinstein は、アメリカ合衆国の映画プロデューサーで、米国の映画会社ミラマックスの設立者として知られている。

 毎年アカデミー賞に大量の作品をノミネートしていることでも有名である。「恋に落ちたシェイクスピア」「シカゴ」などでは、プロデューサーとしてアカデミー作品賞を受賞した。

 The New Yorkerは、10か月間の取材を通じてセクハラやレイプされたという女優や従業員などの証言を掲載した。その記事の中には、「被害を訴えたイタリアのモデルが警察と協力し、隠しマイクをつけたため、Harvey Weinsteinがセクハラを認めるような発言が録音された音声もあった。」と記述されている。

 30年にわたるセクハラが今まで明るみに出なかった理由は、映画業界の特殊な環境にあったと考えられる。

 Harvey Weinsteinのセクハラにつて掲載した記事の中には、これまでセクハラ行為を沈黙してきた理由について、ハリウッドの女優たちは、「彼は映画界の超大物、もし私たちが被害を訴えたら、私たちは業界から消されることが分かっていたから……。」と語ったということである。

 

2 セクハラ行為が発覚しなかった背景

 セクハラを受けた被害者は、金や名声のある人物の前では、セクハラによる恥ずかしさの意識から泣き寝入りする被害者が多かったとも考えられる。しかし、複数の証言によってHarvey Weinsteinによるセクハラのむごい状況が、セクハラを受けた多くの女優をはじめモデルや女性スタッフに認識され、勇気をもって告発しようという意識が高まったからである。

 「#Me Too」のSNS上での拡散以外にも、セクハラの被害者が声を上げる動きは広がっている。

(1)セクハラが発覚しなかったのはなぜか

  Harvey Weinstein によるセクハラがこれまで発覚しなかった理由は、20人を超える女優、モデ

 ル、女性スタッフたちがセクハラ被害を明らかにしなかったからである。同氏からセクハラを受けた

 被害者たちは、「報復や仕事を失うことを恐れ隠していた。」と吐露しているように、被害者は同氏

 には「逆らえない存在」であったからである。

  Harvey Weinstein は、自分自身の権力によって、被害者の意に反するセクハラを30年間にわ

 たって行ってきたことは、極めて悪質で許されない非人道的な行為である。

  この事態は、スクールセクハラと同じように、教員と児童生徒は主従関係にあることと共通してい

 る。

  セクハラ被害は、被害者が証拠を残せない場合が多い。また、他人に知られたくないという思いか

 らすぐに被害を明かさない場合も多い。そのため、後から訴え出ても「証拠はどこだ。」「なぜあの

 時言わなかった。」などと、被害者が疑われ非難されるケースが少なくないことも大きな要因になっ

 ていたと考える。

(2)長年にわたるセクハラ等が暴露された理由

  今回、Harvey Weinsteinの長年にわたるセクハラ等が暴露されたのは、「New York Times」や雑

 誌「The New Yorker」による告発記事とともに、米国におけるセクハラや女性差別に対する意識が

 非常に高まってきたからである。

  「泣き寝入りせず声を上げよう」という意思の象徴となったのが、「#Me Too」である。

  始まりは女優アリッサ・ミラノが、セクハラや性暴力を受けた女性が「#Me Too 」と書けば問題

 の重大さを皆に分かってもらえる、と呼び掛けたからである。

(3)セクハラの告発・処分の増加

  Harvey Weinstein セクハラ騒動を契機に、セクハラの告発・処分が世界各地で沸き起こってい

 る。「Harvey Weinstein効果」と言ってよいかも知れない。告発された著名人の数は、米国だけでも

 すでに50名近くに及んでいる。被害者の集団の声はさらに広がって、他の国の有名人によるセクハ

 ラも暴露されつつある。

 

3 NGOやPKOの要員によるセクハラ行為

 フランスのパリを拠点とする国際NGO(非政府組織)の「国境なき医師団(MSF)」は2018年2月14日、英語版の公式サイトで声明を発表し、セクハラや性的虐待を理由に前年1年間で職員19人を解雇していたことを明らかにした。このことについて、NHKニュース(2018年年2月15日付)でも報じた。

 怪我や病気の治療の代償と引き替えにセクハラを行うことは、医師としてのプライドや使命感・倫理観の欠如である。また、被害者の尊厳をないがしろにするとともに、医師としてだけではなく人としても許されない行為である。厳しく罰せられなければならない重大な犯罪行為である。

 世界に展開する国連平和維持活動(PKO)の要員らが2015年に、派遣先で未成年を含む女性にセクハラなどを行った疑いのあるケースが計69件あったとする報告書も公表されている。

 国連PKO要員や国連職員がセクハラやレイプを起こしたとしても、刑事免責が認められている。このことがセクハラやレイプが横行する温床になっていると考えられる。

 セクハラに対しては、国連で何度も糾弾されてきたが、決して許されることでない。国連をはじめ各国において、早急に厳しい罰則規定を設けて、公然と繰り返されるセクハラやレイプをストップし、女性の尊厳を守っていかなければならない。

 

 

 

♦ 注釈

1 ハッシュタグ:Twitterを中心としたSNSで、投稿内のタグとして使われるハッシ

  ュマーク「#(半角のシャープ)」がついたキーワードのことである。

♦ 参考・引用文献

1 NHKの情報番組「金曜イチから」(平成30年1月12日放送)

2 平成28年度公立学校教職員の人事行政状況調査の概要(文科省)

3 毎日新聞(2017年9月5日付)

4 The New Yorker(2017年10月12日付)

5 New York Times(平成30年1月12日付)

6 AFP  BF NEWS (国境なき医師団、性的虐待などで職員19人解雇 :2018年2月15日)

 

                                     平成30年3月22日

 一般的に、児童生徒は年齢の近い若い教員に親近感をもち、自分の思いや悩みなどを話しやすいと感じている場合が多い。また、知識や経験が豊富で頼りになる大人として、憧れの存在であるとも考えられる。そのため、児童生徒の中には、若い教員の関心を引いたり、甘えたりする者もいる。

 一方、20・30歳代の教員は、そのような児童生徒の言動を

 在職者に対して被処分者の比率は、高等学校が0.04% 、中学校が0.03% 、小学校が0.02%である。高等学校の比率が最も高く、小学校の2倍に当たる。教育関係者はこれらの実態を真摯に受け止めるとともに、教員の資質向上と倫理観の向上を図っていくことが求められている。

 処分の対象となった行為は、図表1から分かるように、「体に触る」89人、「性交」44人、「盗撮・のぞき」40人が多い。

 文科省の調査結果によると、被害者は自校の児童22人(9.8%)自校の生徒87人(38.5%)である。

自校の児童生徒に対するスクールセクハラを起こした教員が、平常心で授業に臨むことが

 教え子とホテルでみだらな行為をした高校教諭30人、保健室・生徒指導室等でスクールセクハラを行った中学校教諭が32人、教室でスクールセクハラを行った小学校教諭が31人など、「学校やホテル」という特殊な場所で起こるスクールセクハラは、極めて憂慮すべき事態である。

 スクールセクハラによって、処分された教員の中には、他の地域で採用され、再びスクールセクハラを起こしたケースも報告されている。