最近、校長の人事考課にかかわる時間が、かなりの比率を占めているという声を耳にする。このことは、多忙感を抱く校長の頭を悩ませかねないが、多くの校長はいろいろな工夫でこのハードルをクリアしているようである。
地公法、地教行法には「教員の勤務成績の評定」の規定がある。
平成12年度から都教委は敢えて「人事考課制度」を導入実施した。この背景には、教員の資質能力の向上と学校組織の活性化を積極的に進めていく意図がうかがえる。いわば、新しい時代における教員の評価制度といえよう。
本制度のねらいは、学校組織の活性化を目指すことはもとより教職員に公正な処遇と働きがいを与えるとともに校長が提示する学校経営方針を教員一人ひとりに浸透させて、その経営を実現することにある。
この制度の導入から8年目を迎えた今、人事考課のねらいと成果は着実に上がっていると思うのだが、ぜひ現場の声も伺いたい。
人事考課は、教員の自己申告と管理職による業績評価の二本柱からなる。人事考課を実施する基盤となるのは、およそ年間3回の面接と授業観察及び自己申告書作成指導である。
今回は、教員の業績評価について提言したい。
1 業績評価の留意点
教職員の職務実態の把握では、校長の授業観察が中核となる。校長は、
日常における教職員の職務内容を客観的・具体的に把握していなければ、
適正かつ説得力のある指導や評価はできないと考える。
(1) 実態把握の中核は授業観察
とくに、教員にとって最も重要な教科(学習)指導に関して校長は自己申告書や指導計画(案)をよく読んで、少なくても1単位時間の授業観察を教員、児童生徒双方の表情を見ながら行うべきである。その際、先入観や決めつけを排除し、できるだけ多様な場面と多面的な力を観察記録し、トータル評価したいものである。
(2) 授業観察後の対応
校長は、授業の観察しっ放しは避け、先延ばしにしないで教員に感想や助言を述べるべきだ。時間確保に苦労するだろうが年間3回は確保したい。
(3) 副校長からの情報
副校長は、職員室にいて日常の教職員の業務を観察するだけでなく、主幹級職、主任などから情報を入手する立場にある。校長は、副校長にそれらの情報を記録整理するよう指示し、教職員の指導助言に活かすべきである。
2 人事考課における面接の留意点
校長が自校の教職員の人事考課を進める中で重要なのは、当初の自己申告時、中間申告時、最終申告時のように原則3回とされている面接である。
最終申告時には、教員自身による自己評価があるので、校長・副校長が考えている評価と大きく乖離することはほとんどないといってよい。
校長・副校長は、面接を実施するにあたって次の点に留意してほしい。
(1) 面接する場所 ━ プライバシーが確保できる部屋にする。
(2) 面接日時 ━ 余裕を持って告知し、面接時間を十分確保する。
(3) 副校長の同席 ━ 同席させた副校長には、聞き役をさせ、必要に応じて日常の観察で気付いたことや目標設定とその取組み等が自校の経営計画とどうリンクしているか、また、その意味付けや価値付けを説明させることに配慮する。このことは、人材育成にもつながる。
(4) 教職員と本音を語り合うという心意気を持つ ━ 都教委は、結果主義に重きを置いてはいるが、「情意」も含めてプロセスを評価に加えている。校長は面接の場で、個々の教職員の「能力」「情意」「実績」を全教育活動の中で評価していることを強調し、理解させたい。このことは、教職員の意欲向上、職務達成の上で非常に有用であると考える。
3 人事考課の行動計画の策定
多忙な校務執行のなかで、人事考課を的確に行うために校長は、年間を通じてどの時期に何をすべきか、何を準備すべきかを文書化しておくべきである。次に計画例を示す。
(1) 校長自身の自己申告書作成(4月)
(2) 第1回面接(5月) 申告書の書き方を指導することから始める。
(3) 授業観察の記録・分析(6月)観察後の指導 第2回面接(11月)
(4) 教職員の自己申告書の内容確認(7・8月) 評価者研修会
(5) 業績評価の資料整理(12月)
(6) 第3回面接(1月)
(7) 各教職員の自己評価(2月)
(8) 評価基準の設定と評定(3月)
(9) 本人への評価開示と不服申し立て等の受理(3月・4月)
4 評価者としてのスキルアップ
都教委の人事考課制度における1次、2次評価者はそれぞれ副校長、校長であるが、評価にあたっては、情実や恣意による評価を避け、公正かつ公平にして妥当性の高いものを心掛けることは言うまでもない。
そのためには、評価者研修会等で積極的に研鑽を積み重ねて、自信と力量を身に付けておくことが要諦である。