提言24: 学校評価へのアクティブな取り組みに期待する!  (2009/11/08 記)

 教育基本法、学校教育法/学校教育法施行規則の改正により、各学校及び設置者においては、速やかに学校評価の実施及び公表等に向けた取り組みに着手するとともに、平成21年度の学校経営計画の実践が進められている。
 新しい学校評価の視点がどのように学校経営計画に生かされ、校長は具体的な実践をどう進めたらよいのか、学校の取り組みを基盤にして提言したい。

1 学校評価の必要性  
(1-1) 学校の裁量拡大、自主性・自律性の高まり 
 教育活動の成果の検証、必要な支援や改善により、児童生徒がよりよい教育活動を享受できる学校運営の改善と発展と教育水準の向上と保証が求められている。
(1-2) 学校運営の質に対する保護者等の関心の高まり 
 学校が適切な説明責任を果たし、学校の運営状況に関する共通理解を持つことにより相互の連携協力を図ることが求められている。
(1-3) 学校の教育活動、運営状況を評価することにより、改善を図り、評価結果等を広く保護者等に公表することが求められている。  

2 学校評価の目的
 学校評価の大前提である「学校改善に生かす」評価を学校が主体的に実施するかが大きなキーポイントになる。
(2-1)学校の教育活動その他の学校運営についての目標達成状況やその取り組みについ て評価することにより、学校としての組織的・継続的な改善を図る。
(2-2) 学校が、自己評価・学校関係者等による評価の実施と結果の公表による説明責任を果たし、学校・家庭・地域の連携協力による学校づくりを進める。
(2-3) 各学校の設置者等が、学校評価の結果に応じて、支援や条件整備等の改善措置を講じ、教育の質を保証し、その向上を図る。

3 学校評価の実際(東京都A区立B小学校の例を引用して)
(3-1) 自己評価(学校の教職員が行う評価)  
 各学校が、自らの教育活動やその他の学校運営について、目指すべき目標を設定し、その達成状況や具体的な取り組みを評価することにより、学校としての組織的継続的な改善を図ることである。
 @) 校長のリーダーシップと評価委員会の設置   
 評価委員会を組織し、「自己評価」の意義、内容、方法の検討を深める。特に、校長のリーダーシップにより、教職員の意識と理解を深め、校長の経営方針に即した具体的な評価計画を策定する。  
 A) 校長の経営計画と教職員の理解 
 学校経営計画の全体像が教職員に浸透し、年度の「重点」を中心に評価項目を設定する。評価委員会を中心に協議、検討を重ねる中に、教職員の目的意識を持った意欲的な活動が育ち、教職員の動きが活性化される。経営計画への教職員の理解を深めることにリンクする。
 B) 評価項目
 「教育目標」「特色ある教育」「教職員」「管理職」「説明責任」「施設管理」「特別支援教育」「家庭教育」等々、膨大な評価項目になるが、学校全体の機能と使命を念頭に、広い視点から評価し、学校教育の充実を図っていく大切な要素となる。その上で、評価の効率化を図る方策を検討することも必要である。
 C) 学校の経営計画と実践の成果・改善への評価   
 校長にとっては教職員の取り組み姿勢は、経営計画・改善への重要な資料ともなり、経営のマンネリ化が避けられる。また、教職員にとっては学校経営への参画意識が高揚され、児童生徒が育つ教育活動の追求につながっていく。
(3-2) 学校関係者評価   
 保護者、地域住民等の学校関係者により構成された学校関係者評価委員会が教職員の自己評価の結果について評価することを基本とする。
 また、保護者の声や児童生徒の実態を把握して学校運営の改善し、発展を図っていくものである。これらの結果を公表し、説明責任を果たすと共に、保護者、地域住民等の理解を得て、学校・家庭・地域の連携協力による学校づくりを進めることにつなげていく。
 自己評価の内容が、どの評価項目に含まれるのか、はっきりしない場合がある。的確な学校改善につながる分かりやすい評価を検討する必要がある。
 「分からない、答えにくい」という評価については事前に学校の考えを明確に示す必要がある。例として「分わかりやすい授業とは」「学力とは」等について、関係者のとらえ方は様々である。
(3-3) 第三者評価  
 当該の学校に直接かかわりをもたない専門家等が、自己評価及び学校関係者評価の結果等を資料として、教育活動その他の学校運営全般について、専門的・客観的立場から評価を行うものである。
 第三者評価を活用した学校評価のあり方については、現時点では各学校独自で行える体制になっていない。今後、情報を収集して検討を深めていくことが求められる。

4 学校の現状
 文部科学省が中心となりガイドラインを示すなど、学校評価の推進化を図っているが、今のところ自己評価とその公表程度に止まり、ガイドラインに示されている学校関係者評価とその公表までには至っていないようである。
 公表の具体的手立てとしては、ホームページ、学校だより、PTA総会、保護者会等で行われている。先行的な実践事例を参考にしながら自校の評価計画を検討し実践していくことが肝要である。

5 課題と今後の方向
(5-1) 自己評価と学校関係者評価のあり方
 @) 学校評価についての共通認識
◎教職員に対して ━ 年度当初の職員会議等で、何のために学校評価を行うのか、学校評価の定義、学校評価ガイドライン、学校関係者評価委員会や学校評議員の役割と具体的な経営参加等、学校改善のシステム等について、共通認識を持たせる。
●具体的には、学校経営計画とその実践を評価する。評価項目は校長の学校経営計画の中から設定し、教職員に理解させ、改善策にかかわる自己評価書を作成し公表する。
●評価項目に入らないものをカバーするために自由意見欄を設けて、広い視点で教職員の考えを取り入れるようにする。
●学校経営を中心に評価することで、校長の経営計画とその実践に関する改善要素となり、マンネリ化が避けられ、校長の経営力も高められる。
◎学校関係者評価委員に対して ━ 年度当初の学校関係者評価委員会において、その役割と評価の意義やシステム等について話し合い、共通認識を持つように努める。
●自己評価書(自己評価結果と改善策)、保護者のアンケート・児童生徒の声等を基に評価改善策の検討を深めていく。
◎保護者に対して ━ 学校説明会や保護者会において、「保護者の声やアンケート」を学校改善に反映するために、当該学年・学級の活動とともに学校教育全体を見据えて評価し、保護者の理解を深めるよう啓発に努める。
◎児童生徒に対して ━ 学級指導等の場で学校改善への声を活かしていく学級担任の対応が重要である。
 A)評価項目について 
◎分かりやすい項目にするのがポイント ━ 学校関係者評価委員とともに、評価項目を検討することで、より学校改善につながる評価となる。
●「分かりにくい、答えにくい」項目については学校の説明不足なのか、評価項目としてなじまないのか等を検討し、学校としての考えを明確に示す必要がある。例として「宿題」のねらいは何か、家庭ではどうすべきか、学校ではどう対処するのか等。
●評価の「ずれ」については、教職員、学校関係者評価委員、保護者、児童生徒の評価項目について、認識の違いがあって当然である。学校側の評価の意図を明確にし、評価委員等の「ずれ」も視点の広い評価の一端として、学校改善策に反映する姿勢も必要である。
(5-2) 学習内容の変革と評価
 学習指導要領の改訂が進み、全国学力調査も行われ、教育に対する関心が非常に高まっている折である。「生きる力の育成」「知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成」「豊かな心や健やかな体の育成」等について、学校現場では日常の教育活動の充実と改善に努めている。
 学校評価についても、この教育改革に即して、日々の教育がどのように運営され、改善されているか、一人一人の児童生徒の教育的ニーズに即して納得のいく教育がなされているかを追求していくものである。学校評価を総合的な視点で捉え、新しい教育へのビジョンの構築と児童生徒の成長のために学校評価をアクティブに活かして欲しい。

以 上   

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