提言34: 学校改善、教育水準向上のための学校評価を見直そう!

(2011/4/20 記)  

 従来の学校評価は、教職員による内部評価(自己評価)のみの自己点検資料であった。内部の見えにくい、分かりにくいものであった。このようなことから、学校を外部からも様々な目で見たり、評価を得たりすることによって、より広い視点から教育活動を見直すことが必要となってきた。
 保護者や地域住民等、学校に関係する人たちが、一緒になって子どものことを考え、それぞれの立場、視点から意見を出し合うことによって、よりよい学校をつくるために設けられた制度が、「学校評価」である。学校、家庭、地域等で子どもを育てる機運を醸成し、開かれた学校づくりの推進が図られるようにしていくことが重要である。 

1.学校評価
 学校の自主性・自律性を高める上で、教育活動等の成果を検証し、学校運営の改善と発展を目指すことが重要である。また、学校が説明責任を果たし、家庭や地域との連携協力を進めていくことが必要とされている。 
 このようなことから文部科学省では、学校教育法を平成19年6月に改正し、第42条において、学校評価を行い、その結果に基づき学校運営の改善を図り、教育水準の向上に努めることを規定した。また第43条においては、学校の情報提供に関する規定を新たに設けた。 
 さらに、上記の学校教育法改正を受けて、学校教育法施行規則を平成19年10月に改正した。

(1-1)学校評価の必要性  
 文部科学省「学校評価ガイドラインに」よると、学校評価の必要性を次のように記述している。
 Œ 教育の質の向上
 教育委員会などが学校評価の結果に応じて、学校に対する支援や条件整備等の必要 な措置を講じることにより、一定水準の教育の質を保障し、その向上を図る。
  学校運営の改善
 目指すべき成果とそれに向けた取り組みについて、目標を設定し、その達成状況を把握・整理し、取り組みの適切さを検証することにより、組織的・継続的に学校運営を改善する。
 Ž 信頼される開かれた学校づくり   
 自己評価及び外部評価の実施とその結果の説明・公表により、保護者・地域住民から学校運営に対する理解と参画、協力を得て、信頼される開かれた学校づくりを進める。

(1-2)学校評価の目的 
 学校評価ガイドラインによると、学校関係者評価の位置づけや目的は、次のように整理されている。
 Œ 評価活動を通したコミュニケーションにより、保護者や地域住民などと学校が互いに理解を深めることが、学校関係者評価の大きなねらいである。 
  学校関係者評価は、学校の自己評価の客観性・透明性を高めることになる。
 Ž 学校関係者評価は、保護者や地域住民などが、よりよい学校づくりのプロセスに参加するための仕組みである。 

(1-3)自己評価と学校関係者評価
 学校評価の推進を図るため、平成19年に学校教育法、学校教育法施行規則の改正により、自己評価・学校関係者評価の実施・公表、評価結果の設置者への報告に関する規定が新たに設けられた。 
 さらに平成22年に改訂された文部科学省「学校評価ガイドライン」は、各学校や設置者における学校評価の取組の参考に資するよう、その目安となる事項が示された。各々の学校評価は、必ずこれに沿って実施されなければならないことを示す性質のものではないが、法令の規定や先進的な取組事例、有識者等の議論を踏まえ、学校評価の指針となるモデルの設定と活用を説明している。各学校や設置者は、その創意工夫により進めてきた学校評価の取組の中に、「ガイドライン」に示された内容を適宜取り組むことにより、学校評価の一層の改善と充実が図られるものである。 

2.「学校評価ガイドライン」に対応した学校評価の改善
(2-1) 学校関係者評価委員会の設置
 従来の学校評議員に加えて、保護者、PTA役員、地域住民、卒業生、特色ある教育活動の指導者、他校教職員(元本校教諭)、幼稚園長、中学校長等で構成された学校関係者評価委員会を設置する。
 このような学校関係者などの外部評価者で構成された委員会が、学校の教育活動等について観察や意見交換を行い、広い視点から、学校長の経営方針を十分に理解し、学校教育の改善と充実に結びつけるものである。 

(2-2)学校教職員による自己評価書の作成  学校経営計画や具体的な実践に照らして、達成状況や改善点についての教職員の自己評価である。教職員の自己評価にあたっては校長の学校経営計画の中から評価項目を設定する。このことにより学校経営計画が教職員の理解を深めることになる。自己評価への意識も高まり、教育目標達成に向けての教職員の一体化が図られる。学校の教育目標の達成にむけての教職員の実践とその評価が個々の子どもの成長に機能する。

3.自己評価と学校関係者評価のあり方
(3-1)学校評価についての共通認識
 教職員に対しては、年度当初の職員会議、学校評価の校内研究会等で、全員が共通認識を持つようにする。
 学校関係者評価委員に対しては、年度当初に示しておいたその役割と評価の意義について、認識を深めるようにする。自己の生活信条や教育現場の客観的な見方、専門的な目で見た評価ができるようにする。 
 保護者は、年度当初の学校説明会において、学校の教育内容の改善等の要望書を「保護者の声」として提出する。
 子どもに対しては、学級担任による学級指導等の場で、子どもが評価する学習活動をとらえ、改善に活かすようにする。 

(3-2)自己評価
 Œ 学校の取組をまず評価するのは、その学校に所属する教職員自身である。
  学校経営計画の重点としたものを中心に評価する。校長のリーダーシップと教職 員の指導力が大きな要素となる。予め設定した目標や具体的計画等に照らして、達成 状況の把握や指導の適切さ等について評価を行う。このことにより校長の学校経営計画が教職員により理解され、校長は教職員の実践姿勢を把握することができる。
 Ž 自己評価をもとに改善策を策定し、教職員が一体となって作成した自己評価書を 学校改善の糧として実践を図っていく。
  評価項目に該当しない意見もカバーするために、広く自由意見欄も設定して、学 校改善に結びつけていく。

(3-3)学校関係者評価
 Œ 学校経営についての教職員の自己評価を学校関係者が評価して、学校改善を図っていく。自己評価を学校関係者が再度評価する意義や方法について周知徹底を図り、有効に機能するような評価、学校改善の資料とする。
  学校関係者評価の報告書を作成し、教職員、設置者等に報告し、学校発展への活用資料とする。
 Ž 評価項目の内容が分かりにくい場合がある。「分からない、答えにくい」評価項 目を分かる評価として学校改善に役立つ資料として検討していく。

(3-4)保護者の学校評価、子どもの声
 Œ 学校改善への様々な声を取り入れていく。学習内容や授業にかかわる理解等、学 習評価に関する意見要望等を把握することも必要である。
  評価項目が具体的な内容になると、学習評価に関することも含まれてくる。保護 者の評価、子どもの声にも納得のいく対応が必要である。

(3-5)その他、留意事項
 Œ 評価の「ずれ」に留意
 教職員の自己評価と学校関係者の視点に「ずれ」が生じないように検討する。評価のずれについては、マイナス要因としてではなくより広い視点で自己評価をとらえ学校関係者評価として見直していくことも必要である。
  学校公開の推進
 ・学校行事、授業公開等を参観することによって、学校への理解を深め、学校の教育活動に関する情報を得ることができる。学校・家庭・地域の3者が中心になって子どもを育てる機運を醸成し、地域と連携し開かれた学校を通して、より広い視点から子どもを育てる学校にしていく。
 ・説明責任の徹底を図るため、年度当初に保護者対象の学校説明会を開催し、学校経営計画、教育活動、指導の重点、目ざす児童像、評価の目的や方法等について説明し、理解を求めることも必要である。

Toward the better school to structure,,

 学校評価は、経営計画や教育計画に基づいて実践される教育活動が、どの程度機能しているかを評価するためのものである。成果と課題を明らかにし、学校改善を進め、子どもたちをよりよく育てるものである。
 自己評価、学校関係者評価はあくまでも学校改善、教育水準向上のための手段であり、評価そのものを目的としているものではない。目的と手段を取り違えないように留意し、子どもたちの豊かな成長、生きる力の育成に努めていかなければならない。

以 上   

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