提言91: 男女共同参画社会づくりを目指して 

              〜児童生徒が輝く学校のグランドデザインを描こう!〜 

 
 2012(平成24)年12月に発足した第2次安倍政権は、女性の力を「我が国最大の潜在力」と掲げた。そして、その力の発揮を持続的な経済成長のために必要であるとして、成長戦略の中核に位置付けた。特に女性が自らの希望を実現して輝くことは、「女性の力」を最大限に発揮し活力ある社会づくりにつなげ、全ての人々が幸福に暮らせる社会の実現を図れると考えたようである。
 2015(平成27)年9月24日、安倍首相の自民党総裁が正式に決定した。その後の記者会見で、「強い経済」「子育て支援」「社会保障」を新たな3本の矢と位置付け、2020(平成32)年には国内総生産(GDP)600兆円の達成を目標とした。また、「1億総活躍社会担当大臣」を新設し、「女性活躍担当と拉致問題担当」を兼務させた。しかし、1億総活躍社会とはどのような社会か、女性が輝く社会との関わりはどうなのか、具体的なことは見えてこない。
 筆者は、「男女共同参画社会づくり」を目指す過程において「女性が輝く社会づくり」も進展すると考えている。そのためには何が必要か、また、児童生徒が輝く学校のグランドデザインなどについて、見解を述べてみたい。
 1.男女共同参画社会づくり
 「女性が輝く社会」は、2014(平成26)年の流行語大賞の候補にもなった言葉である。その目玉の「女性活躍推進法案」は年末の衆議院解散で廃案になった。安倍政権は、目標とする「女性が輝く社会」を盛んにアピールしている。しかし、具体的な施策は今一つである。施策に対する国民一人一人の認識が深まらなければ、具体的な活動を起こすことは難しい。
 筆者は、「女性が輝く社会づくり」を目指すことよりも、男女が共に持てる力を発揮し、主体的に参画できる社会づくりのほうが重要であると考える。男性中心の社会から、男女が社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保されること、そして、男女が均等に政治的、経済的、社会的、文化的利益を享受する社会づくりを、男女協働によって創り上げることが重要である。
 共に責任を担うべき社会づくりの中で、男女がその生き方に自信と誇りを持ち、主体的に生きることが男女共同参画社会づくりにつながると考える。
 (1)男女共同参画社会づくりへの歩み
 1945(昭和20)年から今日までの70年間、女性の人権や権利は少しずつ、改善され獲得できるようになってきた。しかし、男女共同参画、男女格差などは、依然として改善されず女性が自己の意思によって十分に活躍できる状況ではない。
 この70年間、日本政府は女性の権利等に関わる法案を制定してきた。
 @ 2015(平成27)年は戦後70年である。1945(昭和20)年に女性の参政権が認められ、女性が選挙の投票を通して意思を表す権利を手にした。
 A 1985(昭和60)年には、女性が男性と均等な機会と待遇を得られることを目指して「男女雇用機会均等法」が制定された。
 B 1999(平成11)年6月23日、「男女共同参画基本法」が、交付・施行された。  
 C 2006(平成18)年、「改正男女雇用機会均等法」が制定され、女性だけでなく、男女両方に対する差別の禁止が盛り込まれ、差別禁止が強化された。
 D 2015(平成27)年8月28日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が制定された。
 (2)日本における男女格差
 これまで、日本社会では女性は子どもを産み、育て、家事をするというのが一般的であり、 夫婦片働きが主流であった。しかし、徐々に女性の社会進出は進み、現状では夫婦共働きが増加してきた。
kyougi     しかし、左のグラフからも分かるように、最近でも、「平均給与」「雇用形態」「家事・育児の時間」などの状況を見ると、男女格差が余りにも大きい。女性に対する差別と捉えることもできる。
 特に、女性の社会進出における大きな問題点は、出産・育児と仕事の両立が非常に難しいことである。
 女性の平均給与は男性の半分を少々上回る程度である。女性の雇用形態は、非正規社員が正社員を上回り、男性の非正社員の2.1倍である。女性の家事・育児時間は、男性の5倍を超えている。企業や男性の意識改革がなければ、男女格差の改善を図ることは極めて難しい。
  (3)女性の社会進出が進まない日本
 生産年齢人口の減少によって、低下している労働力を、女性の労働力で補い、経済成長につなげることが、「女性が輝く社会づくり」の本音に思えてならない。  
kyougi     海外では「先進国の日本がどうして女性の社会進出は進まないのか」と話題になっているのも当然のことである。
 2013(平成25)年6月25日、世界経済フォーラムは「男女格差報告2013年」を発表した。日本は対象国136ヶ国中105位であった。2012(平成24)年の101位より更にランクが下がり、日本は過去最低の順位となった。
 世界経済フォーラムのリリース(注1)によると、男女格差の小さい国は、1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェーである。5位のフィリピンは、太平洋地域で最も男女格差解消の取り組みが進んでいることが分かる。
 アジアでは、中国が69位、インドが101位、韓国は111位で、日本同様に下位圏であることも明らかである。男女平等ランキングを上げる努力を政府、企業が本気で取り組まなければ、日本に対する海外からの批判は高まる一方である。
(4) 男女共同参画社会づくりへの課題
 内閣府2011(平成23)年版 男女共同参画白書には「…男女を問わず個人の能力等によって役割の分担を決めることが適当であるにも関わらず、“男は仕事・女は家庭”…」と記述されているように、これまでは、男性、女性という性別を理由として男女の役割分担を考えていることが明らかになった。
 下記の図表(NHK時事公論 電子版より引用)からも分かるように、未だに男性は外で猛烈に働き、女性は家庭を守るという意識が根強く残っているようである。
kyougi     今、問われていることは、終身雇用、正社員、男性中心の画一的な働き方を見直し、多様な人材、多様な働き方が実現する社会をつくることである。このような社会こそ、女性も男性も輝ける社会であると考えるからである。それには、固定的な役割分担意識にとらわれず、男女が様々な活動ができるように社会の制度や慣行の在り方を変革する必要がある。
(5)指導的な地位にある女性の割合を30%に拡大は可能か
 安倍政権は、「2020(平成30)年までに指導的な地位にある女性」を30%に上げる目標を掲げた。下記のグラフは、「女性管理職の国際比較」である。 
kyougi     先進7か国の中では、日本の女性管理職は、11.1%で最低である。
 これまで当たり前と思っていた働き方や男女の役割分担意識などを変えなければならないことは、かなり前から迎えていたはずである。
   しかし、「指導的な地位」に就ける女性の人材を国や企業は育成してこなかった。そのため、「指導的な地位」に就ける女性の絶対数は不足している。あと5年で30%に上げることは極めて困難であると考える。  早急に男性中心の画一的な働き方をやめ、多様性に立脚した終身雇用、正社員、女性が働きがいの持てる施策を定め、実施することが必要である。  日本は労働時間が長い割に労働生産性が低い。先進国中では19年連続して最低を更新した。大切なことは女性を特別扱いする「女性活用」ではなく、普通に働けるよう、長時間労働、生産性などを根本から見直し、多様な働き方ができる社会を実現させることが何よりも重要である。多様性を尊重し、男性も女性も共に輝く社会づくりに努めなければならない。
 (6)「男女雇用機会均等法」と「男女共同参画基本法」
 「男女雇用機会均等法」は、男女平等を推進するための法律である。その前文には、「…日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、男女平等の実現に向けた様々な取組が、国際社会における取組とも連動しつつ、着実に進められてきたが、なお一層の努力が必要とされている…」と記述されているように、未だに男女雇用は不平等である。
 今も職場に存在する男女格差を改め、募集・採用・昇給・昇進・教育訓練・定年・退職・解雇など、全ての面で男女とも平等に扱っていくことを早急に進めることが必要である。
 一方「男女共同参画社会基本法」は、日本の社会・歴史・文化が創り出した性差による役割分担論を解消し、男女が家事や社会で共同参画を目指す法律である。したがって、男女が互いに人権を尊重し、能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現を目指すためには、男女個々の意識改革とそれに基づいた企業等の職場環境整備が必要である。

2.女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム
日本政府等が主催する「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」が、昨年9月、東京において初めて開催された。世界で活躍するトップ・リーダーが一堂に会し、女性の活躍促進のための取組について議論を交わし、具体的な提案もされた。
(1)「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム 2014 」での指摘
 2014(平成26)年9月16日、NHK時事公論(電子版)に「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム2014(9月12日〜14日開催)」の内容」が掲載された。
 シンポジウムに参加した道傳愛子解説委員は、参加後、「…安倍首相は女性政策を、アベノミクスの柱に位置づけている…(中略)日本の女性労働率が男性並みに上昇すれば、GDPは大幅に上昇と言われている…(中略)日本国内でも、いま働きたくても子育てと両立が難しい、さらには、女性の貧困ということも問題になっている。どんな立場の人でも輝くためには、そうした問題に光を当てる必要があるのではないか…」などと述べていた。また、IMF(注2)のラガルド専務理事も「日本はOECD加盟国のなかで、女性の労働参加率は低く、男女の賃金差も大きい」と、道傳愛子解説委員と同じことを指摘したように、法律や制度が整備されてきたが、女性が働きやすくなったとはいえない問題が山積しているように考えられる。
kyougi     左のグラフは、女性労働者の15歳以上の人口に占める労働力人口の割合を示したものである。(NHK時事公論 電子版より引用)
 一般に結婚・出産期にあたる30代前後にM字形に落ち込んでいるだけでなく、再び上昇しても、パート・アルバイトなど不安定な非正規の働き方が増えている。しかし、それだけではない。
   現在も、採用は男性のみで女性はいないという企業の割合は40%、総合職として採用されても、10年後には65%が仕事を辞めているというデータもある。
 前述したように、「指導的な地位」に就く女性の割合30%を目指しても、管理職を目指す絶対数が足りないことが、非常に気にかることである。
(2)「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム 2015」での指摘
 2015(平成27)年8月28日、29日の2日間、安倍政権は、昨年に続いて「女性が輝く社会」を実現する取組の一環として、「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」を東京で開催した。このシンポジウムには、世界約40カ国の企業のトップ75人及び日本各地から女性分野で活躍するリーダー1500人が出席し、日本や世界における女性の活躍促進のための取組について議論を交わした。
 安倍首相は、シンポジウムの冒頭において、「もはやなぜ女性の活躍推進かではなく、どのように実現するのか」を具体的に議論する段階にきていることを強調し、本年8月28日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」の成立等を紹介した。 
 国際協力の分野においては、「人権侵害のない社会の実現のために、UN Women(注3)等との協力」についても言及した。また、「女児と教育分野に今後3年間で420億円以上の支援を実施することや、来年のG7サミット議長国の日本としては、女性と自然科学・技術、女児教育を含むエンパワーメント(注4)、女性と健康・保健、女性と起業などを重視していきたい」との見解も述べた。
 日本政府は、この会議を毎年開催して、日本発の女性版ダボス会議(注5)として定着させると約束した。アピールに終わることなく、国際公約であることを肝に据えて具体的な施策をつくり上げ、国際公約を果たしていかなければならない。
 
3.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
 2015(平成27)年 8月28日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が制定された。女性が、職業生活において、その希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するための法律である。
 急速な少子高齢化の進展、生活者の需要の多様化等に対応していくため、女性が個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍することが一層重要となったからである。男女共同参画社会基本法の基本理念を踏まえ、女性の職業生活における活躍の推進について基本原則を定めるとともに国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにすることが求められている。
 これにより、2016(平成28)年4月1日から、国は、職業訓練・職業紹介、啓発活動、情報の収集・提供等を行うこと、地方公共団体は、相談・助言等に努めること・労働者301人以上の大企業は、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが新たに義務づけられることになった。しかし、安倍政権が掲げる「女性の活躍推進」には、その要となる男女の格差是正や女性に対する差別の撤廃の政策が極めて少なく、もっぱら自ら進める「成長戦略」のために女性を活用するというように思えてならない。今後の動向を注視していきたい。

4.学校のグランドデザインを描こう
 2016(平成28)年度中には、中教審から改定内容が答申される次期学習指導要領について、文科省は本年8月5日、これまでの議論を踏まえた答申の素案を公表した。 
 素案には、知識偏重から脱却すると同時に、思考力や表現力を育成する方針が示された。小学校で英語が教科として本格的に導入されるほか、高校の学習内容も大学入試の抜本的改革を視野に大幅に改定されるはずである。現在の高校の地理歴史は世界史が必修で、日本史と地理が選択になっている。骨格案では世界史の必修をやめ、日本史Aと世界史Aを統合して近現代史を中心に学ぶ「歴史総合」を必修科目として新設される見通しである。
kyougi     左の図表(教育課程企画特別部会 論点整理 補足資料から引用)に示されているのは、「育成すべき資質・能力の三つの柱を踏まえた日本版カリキュラム・デザインのための概念」である。 
第1の柱は、「何を知っているか、何ができるか(個別の知識)」である。この柱は、各教科等に関する個別の知識や技能、身体的技能、芸術表現の技能などである。
   第2の柱は、「知っていること・できることをどう使うか」である。即ち「分かっていることは何か」から、「分からないことは何か」を明らかにし、追究すべき問題を共有することの重要性を示唆していると考えられる。したがって、第1の柱とも関連させながら、主体的・協働で追究する問題を発見していくために必要な思考力・判断力・表現力などの資質能力を育成する上で重要である。
 第3の柱は「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」である。この柱は、第1、第2の力が働く方向性を決定付ける情意や態度に関わるものである。したがって、多様性を尊重する態度と互いの良さを生かして協働する力、男女共同参画社会づくりに向けた態度、リーダーシップ、チームワークなど、人間性や世界観を培っていくための重要な柱である。
 素案は、日本社会を「将来の予測が困難な複雑で変化の激しい社会」と位置付けた上で、育成すべき資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直しなど、抜本的な検討を行ったものである。今後の中教審の審議に生かされることを期待したい。
 学校においては、答申の素案に基づいて、学校のグランドデザインを、校長を中心に全教職員が協働で創り上げ、男女共同参画社会づくりを目指していくことが必要である。
 特に、次期学習指導要領において、新教科となる「道徳」と「英語」の学習活動をどのようにデザインするかについても、十分な検討が必要である。
 (1)道徳の教科化
 本年7月4月4日、産経新聞は2018(平成30)年度以降に小中学校で教科化される道徳について、「文部科学省が取りまとめた道徳の学習指導要領解説書を通じ、今年から編集作業がスタートする検定教科書の大枠を明らかにした。解説書には、“寛容”と“規則の尊重”など、ときに対立する価値観が併記されており、これらの記述に沿って編集が進められると子供たちの議論の場となる教科書が誕生する。」と報じた。
 現行の道徳の授業では、読み物や教師が準備した課題等に基づいた授業が多いが、この素案の公表を契機に、「考え、議論する道徳の授業」への改善を図ることが必要である。「寛容」では「許す」ことを学習するが、「規則の尊重」では「許さない」ことを学習することになる。価値観の対立について、唯一の正解を求めることは難しい。しかし答えのない課題に挑戦し、協働で価値観を共有していくことが必要である。
 一人一人の知識や能力には限界がある。自分にはない知識や能力を持った他者と支え合い、補い合って「協働」していくことが最も重要なことと考える。「協働」するためには、コミュニケーション能力やチームワーク、リーダーシップといった力が必要である。他者を思いやり、配慮する優しさも求められる。課題の発見や解決に向けで主体的・協働的に学習活動に取り組む、いわゆるアクティブ・ラーニングの視点からの普段の授業改善をしていかなければならない。例えば、ペアで意見を交換したり、立場を決めて議論をしたりする場合に、「君の意見には反対です。でも理解することはできます。」など、対話や議論を通して相手を認め生かしたり、相手が自分自身を認め生かされたりしているときこそ、一人一人が輝いているのである。
 道徳の教科化に伴い「考え、議論する授業」への転換を目指していくことが必要である。一人一人が輝くことによって、男女共同参画社会づくりの基礎が育まれると考える。
 (2)英語のコミュニケーション能力と教養
 グローバル社会において、国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって極めて重要である。特にコミュニケーション能力の育成について改善を加速化しなければならない。
 2011(平成23)年度より、小学5.6年において外国語活動(英語活動)が週1コマ必修となった。
 外国語活動の目標が、「外国語を通じて、言語や文化について、体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。」と示されているように、英語を頭で理解するだけでなく、使いこなさなければならない。したがって、従来のように机上の勉強だけではなく、小学生の頃からコミュニケーション活動に慣れていくことが必要となる。したがって、学習内容は音声や基本的な表現に慣れ親しむことが主で、指導者は学級担任または外国語を担当する教員、ALT(外国語指導助手)などである。ネイティブ・スピーカー(注6)の協力を得ることも認められている。
 次期学習指導要領改定に向け、中教審の特別部会では各学校段階・各教科における改訂の具体的な方向性を示した。小学校では外国語を使って理解したり表現したりするコミュニケーション能力の向上を目指すことになった。中学年で英語に慣れ親しみ、「聞く」「話す」が中心、高学年は「聞く」「話す」に加え、「読む」「書く」の育成も含めたコミュニケーション能力の基礎を養うことを目標としている。授業時数については、中学年で年間35時間(週1コマ程度)、高学年では現状の2倍の年間70時間(週2コマ程度)に増やした。
 文藝春秋(本年11月号)は、ジャーナリストの池上彰氏と元外務省主任分析官 佐藤 優氏との対談「新・教育論」を掲載した。対談の中で、池上 彰氏は、「…英語教育改革の必要性を叫ぶ政治家や官僚を見ていると、…海外で国際会議の後に行われるバーティで『 How do you do? 』『 Nice to meet you 』と言った後の言葉が出てこない。それで、日本の英語教育は何だったとみんな言うわけです。しかし、それは英語が出てこないのではなく、語るべきものや教養を持っていないからである…」と述べていた。筆者も同感である。
 高学年で「聞く」「話す」に加え、「読む」「書く」の育成も含めたコミュニケーション能力の基礎を養うということは大切であるが、語るべき内容、例えば日本の歴史・文化等の教養とともに、思考力・判断力・表現力等を備えることにより、情報や考えなどを積極的に発信し、相手とのコミュケーションができなければならない。しかし、日本の私立大学の入試では、3教科のみという大学が多い。したがって、受験生は受験科目以外は勉強しないということになる。これでは、日本人としての教養が十分に身に付かないのは当然である。
 児童生徒一人一人が輝くためにも、英語のコミュニケーション能力と教養をしっかりと身に付けることが必要である。また、安倍政権が掲げる「新入試制度や文系学部再編」等の大学改革についても議論を深め、男女共同参画社会づくりを目指していかなければならない。

 ◆ 注釈
 注1 リリ−ス:新しい情報や宣伝を告知・発表することなどをいう。
 注2 IMF:国際金融、並びに、為替相場の安定化を目的として設立された国際連合の専門機関。国際通貨基金(IMF)の本部は、アメリカ合衆国の首都にある。
 注3 UN Women:男女の性区別と人々に夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っている素晴らしい、生きる力を湧き出させるための国連機関。
 注4 エンパワーメント:人びとに夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っている素晴らしい、生きる力を湧き出させることと定義されている。
 注5 ダボス会議:世界経済フォーラムが毎年1月にスイス東部の保養地ダボスで開催する年次総会。
 注6 ネイティブ・スピーカー:英語を母国語とする国で教育を受け育ってきた人々。
 ◆ 参考文献
 1: 外務省ホームページ
 2: 内閣府男女共同参画局ホームページ
 3: 内閣府2011(平成23)年版男女共同参画白書
 4: 厚生労働省ホームページ
 5: 文科省教育課程企画特別部会論点整理 補足資料
 6: 文科省教育課程企画特別部会(資料 3-4 )
 7: 小学校英語の現状・成果・課題について(文科省ホームページ)
 8: 文藝春秋(2015年11月号)「新・教育論」
 9: 産経新聞・読売新聞・朝日新聞・日本経済新聞
( 2015/11/13 記)  

以 上


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