提言99: 児童生徒に伊勢志摩サミットの意義を知らせ、グローバル社会を生き抜く力
         を育成しよう 

 
 2016年5月26日、27日、日本で8年ぶりとなる主要国首脳会議(以下「サミット」という)が、三重県志摩市の賢島を主会場に開催された。
 サミットは主要国の首脳が年に1回、世界的な課題を話し合う国際会議である。今回のG7(Group of 7)には、日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの7か国の首脳に、欧州連合(EU)の欧州理事会常任議長、欧州委員長を加え9人が参加した。サミットは持ち回りで開催され、開催国の首脳が議長として会議を取り仕切る。
 7か国の首脳(以下「G7」という)伊勢志摩サミットに先だって、安倍首相は、5月1日から 7日まで、イタリア、フランス、ドイツ、英国の順で欧州4カ国を歴訪し、首脳会談を行った。途中、欧州連合(EU)本部があるベルギーも訪れ5月7日に帰国した。
 第42回G7伊勢志摩サミットでは、不透明感を増す世界経済と、頻発するテロへの対策などが議論され、サミット最終日に議長国の安倍首相が共同声明を発表し閉幕した。
 今回のサミットでは、インドネシアやベトナムなどアジア・大洋州地域6か国の首脳と国連・国連機関など5つの国際機関が招待された。
 また、2016年4月から9月までの期間、G7閣僚会議が日本各地で開かれ、世界の様々な課題について議論が交わされた。
 本提言では、G7伊勢志摩サミットの概要を児童生徒に知らせるとともに、サミットの意義や世界の情勢に関心を持たせ、グローバル社会を生き抜く力の育成について、筆者の見解を述べてみたい。
 
1.サミットとは 
 サミットについて、公式な定義はないが、一般的に首脳会議に参加する7or8か国の総称としてのGroup of Seven / Group of Eightを意味している。
 サミットでは、国際社会が直面する様々な地球規模の課題について、首脳が一同に会して、自由闊達な意見交換を通じてコンセンサスを形成し、物事を決定し、その成果が「首脳宣言」として発表される。したがって、その影響も国境を越えて大きくなる。それらに有効に対処するには、首脳のリーダーシップが最も重要である。
 
2.サミット開催の経緯
 1970(昭和45)年代に世界を揺るがした2つの出来事が起きた。1つは、1971(昭和46)年に米国が金とドルの交換停止を発表した、いわゆる「ニクソン・ショック」である。これにより、国際通貨体制が固定相場制(注1)から変動相場制へと移行した。また、1973 (昭和48)年には第4次中東戦争が勃発し、「第1次石油危機」が世界を襲い、紛争を機に石油輸出国機構(OPEC)は原油の生産削減と価格の大幅な引き上げを実施した。原油価格の高騰による物価上昇に伴い、為替相場の不安定化と原油の高騰・物価の上昇が重なった。そのため、当時の国際経済は混乱し、世界不況に突入しかねない状況となった。
 2つは、当時の先進諸国の国内事情によるものである。1974(昭和49)年に米国のニクソン大統領、西ドイツのブラント首相、日本の田中角栄首相が相次いで政治スキャンダルで辞任した。先進諸国では国内政治の混乱が続き、単独で経済問題に対応できる状況ではなかったのである。
 このような状況において、先進諸国間で「協調して経済問題の解決に臨むべき」という気運が高まり、1975(昭和50)年11月、フランスのジスカールデスタン大統領の提案によって、フランス、米国、英国、西ドイツ(当時)、日本、イタリアの6カ国の首脳がパリ郊外のランブイエ城に集まり、第1回のサミットが開催された。このサミットの成果と重要性がG6によって認識され、翌年以降も開催されることになった。
kyougi     第2回目となる翌1976(昭和51)年からはカナダが加わり7カ国となり、1977(昭和52)年からは、欧州連合(EU)の欧州委員会委員長が加わった。さらに1991(平成3)年からはロシアが非公式に参加し、1998(平成10)年からは呼称も「G8」となり2003(平成15)年からは正式な参加国となった。しかし、2014(平成26)年3月ロシアが、ウクライナ南部クリミア半島を編入したことにより、再び関係が悪化した。
  アメリカや日本などG7は、ロシア南部ソチで予定されていたサミットをボイコットした。そのため、同年のサミットは、EU本部のあるベルギーで行われ、参加国はロシア抜きのG7に戻った。
 サミットの当初の目的は「経済問題」を討議することであった。その後、「政治」「環境」など次第に議題の多様化が進み、現在では「政治」「環境問題」「テロ」「麻薬」「エイズ等感染症」など幅広いテーマが取り上げられるようになった。
「冷戦」と呼ばれる東西の政治的緊張状態が続いた1980(昭和55)年代には、特に政治色が強まった。1980(昭和55)年のベネチアサミットで政治問題が初めて公式に議論された。これ以降、政治問題は議題として度々取り上げられるようになった。
 1989(平成1)年には、地球環境が重大な危機に瀕しているという世界の共通した認識が強まり、同年の第15回G7アルシュ・ミット(フランス)において、地球環境問題を中心的な課題の1つとして取り上げられた。以降、「地球温暖化」を中心とする環境問題も最重要テーマの1つとなった。
 冷戦の終結以降、急激に地域・民族・宗教間の緊張が高まり、世界各地で民族紛争やテロが多発した。特に2001(平成13)年9月のアメリカ同時テロ後のサミットでは、テロ対策や地域情勢などについても積極的に取り上げられるようになった。

3.G7伊勢志摩サミット開幕
 第42回G7サミット開催地として、安倍首相は昨年6月に三重県志摩市を選んだ。候補地選定にあたっては、仙台、新潟、浜松、名古屋、神戸、広島の6市、長野県軽井沢町も名乗りを上げた。その中から志摩市を選定した理由は、「警備のしやすさ」であった。
(1)G7伊勢志摩サミットの会場
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 メイン会場の賢島は海に囲まれ、橋も2本のみで、関係者以外の出入りをチェックすることが比較的容易だったからである。志摩市は、市の全域が伊勢志摩国立公園内にあり、美しい自然と豊富な海の幸に恵まれた里海のまちである。会場となる賢島は、養殖真珠で知られる英虞(あご)湾に浮かぶ最大の島で宿泊施設も整っている。
  (2)第42回G7伊勢志摩サミットと関連する主な日程
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 第42回G7伊勢志摩サミットと関連する主な日程は、左の表の通りである。 第42回G7伊勢志摩サミットは、5月26日午前開幕した。
 首脳9人による全体会合は5回、サミット招待者を含めた拡大会合は2回開催された。
 全体会合の最も重要な議題は、中国など新興国の経済成長鈍化や原油安で強まる停滞感を克服するため、実効性のある対策を打ち出せるかどうかを議題とする「世界経済」であった。
 27日の拡大会合終了後に、安倍首相が議長会見(首脳宣言採択)を行い、G7伊勢志摩サミットは閉幕した。
  (3)伊勢神宮訪問
kyougi     安倍首相は伊勢志摩サミットの開幕行事として、各国首脳らと三重県伊勢市の伊勢神宮を訪問した。サミット議長の安倍首相が案内役を務め、日本の伝統文化を世界に紹介する機会となった。
 安倍首相は、26日午前10時45分頃から伊勢神宮内宮の入り口にあたる宇治橋前で、各国首脳らを個別に笑顔で出迎えた。
 首脳らが記念植樹を行った後、玉砂利を踏みしめながら新緑に包まれた参道を歩いた。そして、正宮前の石段で記念撮影をした。
  安倍首相が各国首脳と伊勢神宮を訪問したことについて、海外メディアは様々な見方を示した。「伊勢神宮訪問はふさわしくない」、「神道:美しい文化」、「不適切とは思わない」などである。各国首脳はどのように捉えたか、非常に興味・関心のあるところである。
(4)G7伊勢志摩サミットのテーマと議論
 新興国経済の減速、原油価格の下落、貿易の減退等によって不透明さを増す「世界経済」 が、国際社会が直面する最大の課題であった。
 安倍首相は、全体会合で世界経済はリーマン・ショック前の状況と似ているとの認識に基づいて、財政出動(注2)を含む景気浮上策を主張した。米国とカナダは同調したが、ドイツのメルケル首相や英国のキャメロン首相は、財政規律を重視しているため、財政出動には消極的であった。5月1日から 7日までの安倍首相の欧州歴訪による、メルケル首相とキャメロン首相との共通認識は得られなかった。しかし、世界経済の成長やリスクへの対処について、G7として前向きなメッセージを全世界に発信することは合意された。
 「世界経済」、「海洋安全保障」、「シリア難民問題」などが重要議題として議論されたが、「政治・外交問題」、「気候変動・エネルギー」、「開発」、「質の高いインフラ投資」、「保健」「女性」などについても議論された。
 最大の焦点であった世界経済への対応については、「相互補完的な財政、金融、構造政策の重要な役割を再確認する」と明記し、「首脳宣言」を採択した。
(5)「危機回避へ全ての政策」サミット首脳宣言の発表
 5月27日、G7伊勢志摩サミット閉幕に先だって、討議の成果などを盛り込んだ「G7伊勢志摩首脳宣言」を、安倍首相が発表した。その主な内容は下記の通りである。
 @ 世界経済:各国が状況に応じ政策総動員 ? 貿易:市場を歪曲する補助金などの懸念 B テロ対策:平和的共存、包摂的な対話の促進 C 海洋安全保障:東シナ海や南シナ海を懸念 D 北朝鮮:最も強い表現で非難 E ウクライナ情勢:ロシアのクリミア併合を改めて非難

4.オバマ米大統領の広島訪問 
 オバマ米大統領は、27日夕刻、現職米大統領として初めて、米軍が1945年8月6日に原爆を投下した広島を訪問した。オバマ大統領は安倍首相と共に平和記念公園で、原爆死没者慰霊碑に献花した後、声明を発表した。
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(1)オバマ米大統領の声明
 献花後に行ったオバマ大統領は声明で、過去よりも未来への希望を多く語った。「核なき世界」への理想を掲げ、核削減への道が示された。声明の中で、「亡くなった10万人を超える日本の男女や子供、多くの朝鮮半島出身者、10数人の米捕虜を追悼するためだ」と説明した。また、「過去から学び、戦争が起こらない世界を作っていくことができる。広島、長崎を道義的な目覚めとすべきた。」と訴えた。
 
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(2)被爆者と抱擁  声明後、オバマ米大統領は被爆者のもとに歩み寄り、坪井直さん(91)と握手を交し、通訳を介して語りかけた。坪井さんの言葉に耳を傾けるオバマ大統領は、坪井さんが「核なき世界」の実現に向け、一緒に取り組みましょうと話すと「ありがとう」と応じた。その後、もう1人、被爆者の森重昭さん(79)とも握手を交わした。森さんは長年、原爆で亡くなった米国人捕虜を調査し、遺族に伝えてきた。
  その活動は、米国でも知られているという。森さんは涙を流しながら「大統領に会えてうれしい」と伝えると、オバマ大統領は森さんを抱きしめた。今回のオバマ米大統領の広島訪問は、日本人の多くの人々に感動をもたらしたと考えられる。

5.アジア首脳らを交えた拡大会合
 G7伊勢志摩サミットには、アジア太平洋地域やアフリカなど7か国の首脳と5つの国際機関が招待された。拡大会合には、東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のラオス、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、スリランカ、パプアニューギニア、アフリカ連合(AU)の議長国チャドの7か国の首脳、及び国際連合、経済協力開発機構(OECD)、アジア開発銀行(ADB)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行(WB)のトップが参加した。
 5月28日には、安倍首相が名古屋市で拡大会合の参加首脳らと会談した。アジアに焦点を当てた議論に加え、質の高いインフラ投資や保健、女性などについても議論された。

6.G7閣僚会合
 G7閣僚会合は、サミットの下部会議として開催された。閣僚会合の会合数はその年の議長国が決定することになっている。
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 G7伊勢志摩サミットにおける「G7閣僚会合」は、左図のように、日本各地の10会場で開催された。開催期間は、2016年4月〜9月である。
 G7伊勢志摩サミット前に8つの「G7閣僚会議」が終了した。残り2つは、G7伊勢志摩サミット終了後に開催される。
各閣僚会合では、直近の国際情勢について、各閣僚会合の課題に基づいて議論が行われた。その後のG7会合における議論の基礎ともなる重要な会合であった。議長は関係大臣が務めた。
  (1)G7外務大臣会合
 2016年G7外相会合は、伊勢志摩サミットに関連した10の関係閣僚会合の中で最初となる2016年4月10日、11日の2日間広島で開催された。
 被爆地から核兵器のない世界を目指す「広島宣言」や、テロや難民問題などに連携して対応する共同声明を採択し、2 日間の日程を終えて閉幕した。
 11日午前の会合終了後、核保有国の米、英、仏を含む各国外相が平和記念公園を訪れ、核軍縮・不拡散にG7が一致して取り組む姿勢を見せ、歴史的な1日となった。
(2)G7農業大臣会合
 2016年4月23日、24日の2日間、G7新潟農業大臣会合が中央区の朱鷺メッセで開催された。世界の食料安全保障の強化に向けた方策、世界人口が増加する一方で農業者の高齢化の進展、農業への新規参入や女性・若者の活躍推進、気候変動による異常気象の研究などについて、G7の連携を深めることなどを確認し、「新潟宣言」を採択し閉幕した。
(3)G7情報通信大臣会合
 2016年4月29日、30日の2日間、G7香川・高松情報通信大臣会合が開催された。
 この大臣会合において、IoT(注3)や人工知能などの新たなICTの普及する社会における経済成長の推進やセキュリティの確保などについて活発な議論が行われた。その成果として、あらゆる人やモノがグローバルにつながる「デジタル連結世界」の実現に向けた基本理念や行動指針をとりまとめた「憲章」、「共同宣言」及び「協調行動集」(共同宣言の附属書)という3つの成果を採択し、世界に向けて統一のメッセージを発信した。
(4)G7エネルギー大臣会合
 2016年5月1日、2日の2日間、G7北九州エネルギー大臣会合が開催された。  
 世界経済に不透明さが増す中、エネルギーは経済活動の基盤であるとの認識に立ち、「グローバル成長を支えるエネルギー安全保障」をテーマに据え、多様で重要なエネルギーの課題と対応について議論を深めた。「エネルギー安全保障の強化」、「持続可能なエネルギー」などの議論を踏まえ、「グローバル成長を支えるエネルギー安全保障のための北九州イニシアティブ」として取り纏めた。
(5)G7教育大臣会合  
 2016年5月14日、15日の2日間、G7教育相会合が岡山県倉敷市本町のアイビースクエアで開催された。教育相会合に先だって開かれた公開シンポジウムで、2014年にノーベル平和賞を受賞したインドの児童労働問題活動家カイラシュ・サティヤルティ(62)さんが基調講演をした。「教育は希望を与える」と訴え各国の大臣らが耳を傾けた。その後、子供の貧困やテロの脅威、欧州へのシリア難民の大量流入、環境変動などの議題に、教育の果たすべき役割について議論した。そして、難民やテロ、貧困など地球規模の課題に、各国が協力して教育による解決を目指すとした「倉敷宣言」を採択し閉幕した。
(6)G7環境大臣会合 
 2016年5月15日、16日の2日間、G7環境大臣会合が富山県富山市において開催された。「COP21における気候変動に関するパリ協定の採択」、「国際化学物質管理」、「生物多様性の重要性」など、7つの議題について議論をした。温室効果がCO2の数千倍ある「代替フロン」の段階的な削減、食品ロスの削減、レアメタル等が含まれる電子機器や災害時に発生する廃棄物の再利用促進など「富山物質循環フレームワーク」、「水銀に関する水俣条約」の発効に向けた監視体制の強化を盛り込んだ共同声明を発表して閉幕した。
(7)G7科学技術大臣会合
 2016年5月15日〜17日までの3日間、G7茨城・つくば科学技術大臣会合が、つくば市の国際会議場で開催された。15日には、江崎玲於奈つくば国際会議場館長と、高エネルギー加速器研究機構の小林誠特別栄誉教授、2人のノーベル物理学賞受賞者が基調講演を行った。5月16日〜17日にかけて、6つの議題について、各国の大臣・代表と議論を行った。島尻担当相は議長として、自ら緊急提案した災害リスクへの国際協力を含む、つくばコミュニケ(共同声明)を世界に向けて発信した。
(8)G7財務大臣・中央銀行総裁会合
 2016年 5月 20日、21日の2日間、仙台市・秋保地区で開催された。
 今回の会合では、世界経済が不透明さを増す中、国が歳出を増やして景気を底上げする財政出動などで、政策協調を打ち出せるかが焦点だったが、財政規律を重んじるドイツなどは、慎重な姿勢を崩さなかった。結果的に、各国がそれぞれの経済事情に応じて、金融政策・財政出動・構造改革などの政策を総動員するといった、当たり前の結論に止まった。また、「パナマ文書」で問題となった国際的な租税回避問題への対策強化や、テロ資金対策などで一定の成果はあったが、最大の焦点の経済政策で足並みがそろわず、サミットに向けて、大きな課題を残す形となった。
(9)G7保健大臣会合
 G7保健大臣会合はG7伊勢志摩サミット終了後、2016年9月11日、12日の2日間、神戸市で開催される。保健分野における国際的な課題について議論する。
(10)G7交通大臣会合
 G7交通大臣会合は、G7伊勢志摩サミット終了後、2016年9月24日、25日の2日間、長野県軽井沢町で開催される。「自動車及び道路に関する最新技術の開発・普及」「交通インフラ整備と老朽化への対応のための基本的戦略」、などについて議論する。

7.「G7伊勢志摩サミット」に興味・関心を持つ授業のデザイン
 今回のG7伊勢志摩サミットにおいては、「世界経済・貿易」、「政治・外交問題」「気候変動・エネルギー」などの議題が取り上げられ議論が交わされた。これらの議題は、子供の将来に直結するものばかりである。世界の子供が将来より豊かに暮らしていくためには、国際問題に興味・関心を持つとともに、それらの問題に主体的に関わり解決を図る資質能力を育成することが重要である。今回のG7伊勢志摩サミットは、国際問題や海外の国々の文化や歴史などを学ぶ最高の機会であったと考える。
(1)伊勢志摩サミット給食
 三重県内の小中学校などでは、伊勢志摩サミットの開催に合わせ、「伊勢志摩サミット給食」を実施した。1月以降、延べ約 240回にわたり、参加国にちなんだ料理を提供した。
 各校の栄養士らが献立を研究するチームをつくり、アメリカの伝統料理「ジャンバラヤ」やドイツの「ジャーマンポテト」など、各国料理のレシピを作成した。
 「サミット給食」終了後、多くの児童生徒から「料理を通じて、外国に興味を持った」との感想が寄せられた。
(2)「イチからわかる!サミット塾」の開催
 外務省は、G7伊勢志摩サミット開催に合わせて、次世代を担う子供たちに、外交や国際問題などへの関心を高めることが重要と考え、三重・広島県内の小中学校(対象:原則として小学校高学年以上)に若手の外務省職員を派遣した。そして、「サミット塾」として、出前授業を実施した。
 出前授業を実施した学校は、三重県が4校(小学校3校、高等学校1校)、広島県が4校(女子中学校・高等学校1、高等学校3校)であった。
(3)国際問題や海外の状況を学ぶ授業
 今回の伊勢志摩サミットや関連閣僚会合は、国内外から注目を集める一大行事であっただけに、国際問題や海外の状況などを学ぶ最高の機会であったと考える。
 学校では、上記の「伊勢志摩サミット給食」、「イチからわかる!サミット塾」などを参考に、サミットや国際問題などに興味・関心を持つ授業のデザインを図り、グローバル社会を生き抜く力を育成することが重要である。 
 授業は、児童生徒・学校・地域の実態を踏まえて、児童生徒が主体的に且つアクティブに取り組んでいくようにすることが必要である。
(4)授業のデザインに当たって
 授業をデザインする基本は、教材(サミットや国際問題等)を媒介とし児童生徒と教師による創造活動であってほしいと考える。したがって、教師のほうから一方的に課題や問題を与えたり、教師が単に説明したりして終るということにならないように配慮したい。
 今回のサミットを契機に、例えば次のような事項(問題)は、児童生徒の興味・関心を引き付けるのではないかと考える。
 @「伊勢志摩サミットに参加した国は?」 A「『首脳』ってどんな人?」 B「どうしてサミットを開催するの?」 C「あなたがオバマ大統領だったら!」 D「世界の子供たちの生活について考えたことはある?」 E「学校に行けない子供って世界にどれくらいいるの?」 F「日本は世界がよりよくなるために何ができるだろう?」などである。
 これらの事項(問題)に児童生徒が感じたり、気づいたりしたことを付加して、個々であるいはグループで、追究すべき問題に練り上げていくことが必要である。問題が出来上がったら、その問題解決のために、必要な資料や情報の収集とそれに基づいた解釈、解釈の客観性を求める対話や発信など、教師は、児童生徒の活動の場を保証していかなければならない。
(5)スカイプ(Skype)の活用 
 すでにスカイプ(Skype)等を活用して、海外の学校と交流を行っている学校もあると考えられる。スカイプの活用によって、海外の同世代との交流を図ったり、「国際問題」について意見交換をしたり、英語で我が国の文化や伝統などを発信したりして、学びの幅を広げていくことが重要である。
 海外の同世代との交流活動をつみ重ねることによって、グロバール社会を生き抜く力を培っていかかなければならない。

◆注 釈
注1 固定相場制:為替相場の変動を固定もしくは極小幅に限定する制度のことである。
注2 財政出動:景気の安定・底上げを図る経済政策の1つで、税金や国債などの財政資金を公共事業な  
  どに投資することによって公的需要・総需要を増加させ、国内総生産(GDP)や民間消費などの増加促   
  進を図ることである。
注3 IoT:あらゆる物がインターネットを通じて繋がることによって実現する新たなサービス
◆参考文献
1 G7伊勢志摩サミットホームページ(外務省)
2 G7伊勢志摩サミットホームページ(内閣府)
3 G7伊勢志摩サミットホームページ(三重県、広島県)
4 読売新聞・朝日新聞・産経新聞
( 2016/06/22 記)  

以 上


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