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お薦めBooks

  本は時代を超えた知の連鎖ともいわれます。日頃の思考を深め、新たな知のストックを積んでみませんか。読書によって知的資産を拡大しましょう。

  生涯、本を読むのが理想でしょうが、若い時に読んでおかなければならない本があると同時に50代、60代にならないと分からない本もあります。読む側にも旬があるし、読まれる本の側にも旬があるようです。

  さて、本会では、教育関連の書籍はもとより、会員の方が適度な知的刺激を受ける内容の本を「お薦めBooks」として紹介しています。ご購入は、書店でどうぞ!

 

◆ 『超一流の雑談力 ~人間関係の悩みを解消してくれる38のスキル ~』 安田 正 著 文響社 刊 1380円 (税別)

 著者の安田 正氏は23歳にとき英国に留学したが、英語ができるのに「話が通じない」場面に何度も出くわした。氏は英語力とは違う能力「コミュニケーション力」を発見、開発したという。

 現在は、企業研修以外にも、東大、京大、一橋大などの大学で教鞭をとっている。

 同書の帯には、「一流の雑談は、人もお金も引き寄せる!」とあり、世間からは一目置かれる人が実践している38のスキルが書かれているのだ。そこには、子どもに接する際のヒントもたくさん盛り込まれている。

 子どもと接することの多い教師は、「自分は話すことが得意だ」と思い込んでいる人も多いと思うが、一方的な話し方に慣れている教師が、異業種の人や苦情・要求をねじ込んでくる人に対しては、一歩、二歩と引いてしまい、対応がうまくいかないケースが多いという。

 多様な場数を踏んでいない教師には、大いに参考になる一冊である。

 

◆ 『世の中が見えてくる統計学』 川又 俊則 著 幻冬舎エデュケーション新書 780円 (税別)

 統計学というと、難しそうな数式を駆使して様々な事象を解析する学問というイメージが強いが、本書は数式を一切使用せずに、身近な数値のカラクリを易しく解説した統計学の入門書の内容になっている。

 今の世の中、数多く発行されている[ポイントカード]では消費者にとってはおいしいポイントが付与され、様々なメリットが発生する仕組みに人気がある。一方、ポイントを貯めるために予定外の物品まで購入してしまい損をさせられるというデメリットが数多く存在する。30% offについつい購入してしまった。保育所入所希望者がいるのに、「待機児童ゼロ」と発表するカラクリ。色々な事象をランキングすることの落とし穴。データ改ざんして、事を有利に進めるなど。

 本書は「統計数字に騙されないためには、データや図の製作者の意図を鋭く読み解くクセを付けることだ」と社会学者の筆者は断言している。「災害からの学びと復興・防災教育など5章からなり、 情報や数値を鵜呑みにしている限り、社会は表面しか見えてこない。一歩引いたモノの見方を身に付ける「社会学的発想」のススメとも受け取れる一冊である。(2015/05/11)

 

◆ 『未来を拓く学校の力』 全国連合退職校長会 編著 ㈱東洋館出版社 刊 2400円 (税別)

 全国連合退職校長会(全連退)は設立50周年を記念して、全国各地の特色ある学校の教育活動、地域の歴史や震災から学ぶ防災など をまとめた内容になっている。

 全連退は全国都道府県にある退職校長会の連合体で、国の教育振興や研究支援、関連する出版事業を行っている。

 本書は「郷土の偉人・歴史・文化に学ぶ」「地域の特色を生かした教育活動」「災害からの学びと復興・防災教育など5章からなり、 退職校長会推薦の全国小中学校、高校の優れた約50事例を写真付きで紹介されており、現場で役立つ1冊である。 (2015/03/20)

 

◆ 『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』 森下竜一・桐山秀樹 著 青春出版社刊 840円

 糖尿病患者やその予備軍は、アルツハイマー病になるリスクが高い。

 食べ過ぎや運動不足、生活習慣の乱れなど、原因には共通部分がある。肥満、高血糖がアルツハイマー病発症のリスクを高めると筆者は断言する。

 本書の中で、予防策として「糖質制限食」を勧めている。

 抗加齢医学専門の森下竜一 大阪大学医学部教授は、「ムリなく実践できる方法」を正しい知識とともに伝授している。

 またノンフィクション作家の桐山秀樹氏は、自らの糖尿病になって取り入れた経験を語っている。

 30歳、40歳、50歳、60歳代の各年代別に、気をつけるべき食生活のポイントが示されており、実生活に役立つ1冊である。

 

◆ 『福井県の学力・体力がトップクラスの秘密』 志水宏吉・前馬優策 編著  中公新書ラクレ 780円

 平成26年春に実施された小中学生対象の全国学力調査や体力テストでトップクラスの成績を収める福井県。

 大阪大学大学院の研究者らが福井県の教育現場に密着して、その秘密を探った記録である。

 その中で、記述されている、伝統的なコミュニティの教育力や3世代同居家庭による育児支援、そして真面目な教師たちの熱心さが印象的である。(2014/12/13)

 

◆ 『「平穏死」10の条件』  長尾 和宏 著 ブックマン 刊 1,333円(外税)

先ごろ、末期がんの米国女性が自分の意思に基づいて安楽死を決行し、世界中で大きな話題になった。

 わが国では、安楽死は自殺であり、医師は自殺ほう助罪となる。

 尼崎市で年中無休のクリニックと在宅医療を運営する院長で、日本尊厳死協会副理事長でもある長尾氏は、500人を在宅で看取った町医者としても有名だ。

 本書の中で、平穏死とは、個人の意思を尊重し、自然に枯れるように旅立つことだとし、また本書を読めば、尊厳死・平穏死は叶い、「安楽死」を選ばずとも、自宅で穏やかな最期は可能であると提言している。

 何本ものチューブを装着して延命治療措置を受けている身内を見舞う人の気持ちは複雑である。

 本書は13万部のベストセラーで、身内の「平穏死・看取り」を考えるのにとてもよい一冊である。(2014/11/19)

 

◆ 『超高齢社会の医療のかたち、国のかたち』 大島 伸一 著 グリーンプレス 刊 1400円(外税)

「長生き」そのものにイキはない。「イキある長生き」に対してどのようにしていくか。日本の高齢者医療を先導する国立長寿医療研究センターの名誉総長が、日本の目指すべき未来像を力強く著わしたものだ。

 人類が初めて経験する超高齢社会では、ただ「治せばよい」という医療は通用しない。著者は、「治し支える」医療へと、それを実現させるための街づくり、国づくりが求められていると論述している。

 豊富なデータを駆使して差し迫った日本の現状や課題を指摘しつつ、著者は繰り返し高齢者に意識改革を求めている。

 例えば、高齢者同士で互助会を作り、動けなくなったら助け合うなどだ。あくまで互助を主体とし、その仕組みと家族や社会の支援を組み合わせる。

 高齢者の生き方こそが、医療と国の形をつくると指摘している。様々な高齢者関連の施策の下で暮らしている会員にとっても参考になる考え方である。(2014/08/27)

 

◆ 『しない生活 ~ 煩悩を静める108のお稽古 ~』 小池龍之介 著 幻冬舎新書 780円(外税)

筆者は、大阪府生まれ、東大の教養学部ドイツ地域文化研究学科で西洋哲学を学んだ。現在は月読寺(神奈川県)・正現寺(山口県)の住職を務め、執筆活動や座禅指導にも携わっている36歳の異才僧侶である。

 同僧は、メールの返信がないと「嫌われているのでは?」と不安になったり、友人が誉められると「自分が低く評価されたのでは?」と不快になるなど自分で自分を苦しめる ━ このような「妄想」こそが仏道で説く「煩悩」だという。

 煩悩を静めるのに役立つのは、もがいて何か「する」のではなく、ただ内面をていねいに見つめる「しない」生活だと説いている。

 平たく言えば、困ったときほど、」次の手を打たず、静かにそっと立ち止まる。凡人にこれができるかなと疑問視することが「する」にリンクするのかも知れない。

 煩悩を静める108のお稽古は、5章から成っている。

 第1章 つながりすぎない   第2章 イライラしない 第3章 言い訳しない     第4章 せかさない  第5章 比べない

 各章のタイトルがシンプルな文言なので、簡単に実行できると思わせる。一読されてはいかが。 (2014/05/20)

 

◆ 『人間にとって成熟とは何か』 曽野 綾子 著 幻冬舎 刊 798円

 <第1話> 正しいことだけをして生きることはできないという表題で始まり、<第18話>不純な人間の本質を理解する、までの中に著者が年長者として、日本人に対する様々な視点から感想や思いがこの一冊に述べられている。

 著者の価値観が、多くの読者に共感や痛快感を与えているのだろう。発売5ヶ月で85万部のベストセラーになっている新書本である。(2014/3/25)

 

◆ 『60歳からの5つの健康習慣』 ~ 一読、十笑、百吸、千字、万歩を合言葉に ~ 石川恭三 著 海竜社 刊 1,260円

 杏林大学医学部名誉教授である著者は、これまで自ら実践してきた効果バツグンのアンチエイジング生活法を紹介している。

 急激に進む高齢化の我が国は、四人に一人が65歳以上の高齢者となった今、日常の健康習慣を進化させ、医療費を少しでも減らして若年層の負担を抑えてほしいと願うのは筆者だけではない。一読の価値はある一冊である。(2013/11/01)

 

◆ 『見逃さないで! ~子どもの心のSOS 思春期に がんばってる子~』 明橋大二 著 一万年堂出版 刊 1,365円

 精神科医師、スクールカウンセラーとして活躍中の著者が、思春期の子どもたちの悩みを解決する道を、多くの実例を踏まえて示している一冊である。

 学校現場で接する子どもたちは1人ひとり違っているが、教師が基本とする、子ども理解、生徒理解について分かり易く、現場目線で書かれている。

 

◆ 月刊「プレジデント(PRESIDENT) 8月21日号 750円 プレジデント社 刊

 この月刊誌は、主として'経営者や管理職を購読者に編集されてきたが、このところグローバル社会を迎えてからは、幅広い読者層を狙い編集されている雑誌である。

 特集記事の見出しには、魅力あるキャプションが並べられている。

すなわち、「人生が変わる勉強法」「年代別、365日[頭の筋トレ]術」 ~この先「10年安心」のスキル習得~ 、20代;⇒実務、⇒勉強=サンドイッチ式演習/ 30代;⇒「数字&情報?分析」の掛け算思考/ 40代;⇒[古典重読]でメンター力全開/ 50代;⇒独立=再雇用も楽々の寝技力とは、などの内容が特集記事として掲載。

 学校の管理職としても幅のある思考、行動、説明責任、フレキシブルな対応等を見直すのには大いに参考となる一誌である。(2013/7/27)

 

◆ 『校長の見識』 ~ 変革期に求められる校長のリーダーシップ ~ 亀井浩明 著 学事出版 刊 2,100円

 著者は、中・高の教諭、東京都の指導主事、教育庁指導部長、帝京大学教授などを歴任、現在、日本連合教育会会長・東京都教育会会長に就任している。

 中・高の教師として18年間、教育行政職員として16年間勤務してきた筆者は、1人の人間として、日本の教育、特に初・中等教育はどうあるべきかについての考えを述べている。また、校長、副校長・教頭に、これからの学校教育はどうあるべきかについて問題提起をしている。

 学校経営を推進する際の参考になる一冊である。(2013/5/21)

 

◆ 『はしれ、上へ! つなみてんでこ』 指田 和/文 伊藤 秀男/絵 ポプラ社刊 1,365円

 2011年3月11日、東日本大震災のあの日、巨大津波をみんなで生きのびた釜石の子どもたちのドキュメント。

 「被災したことを忘れろ」という人もいれば、「忘れるな」という人もいる。でも、僕は忘れない方がいいと思う。(釜石市立東中学校の生徒のコメントより)

 2年前の大震災による津波で大きな被害を受けた、岩手県釜石市の子どもたちは小さい時から、「津波てんでんご」の合言葉で避難の習慣を身に付けてきて、1人の犠牲者も出さなかった。防災教育に役立ててほしい一冊である。(2013/4/24)

 

◆ 『だいじょうぶ 3組』 乙武 洋匡 著 講談社 刊 1,470円 文庫本 600円

 「五体不満足」から15年、杉並区立小学校での教師体験から生まれた、乙武氏が初の小説。4月に都教委の教育委員に就任。

 ある小学校の5年3組にやってきた、手と足がない担任の赤尾慎之介と介護職員の白石優作、不安そうな顔の28人の子どもたちと、泣いたり、笑ったりの1年間が始まるというストーリー。 現実以上のリアリティーと学級の雰囲気がベストセラー本になった要素があるようだ。現在、本書を映画化したものが全国で好評上映中。

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 『ありがとう 3組』 乙武 洋匡 著 講談社 刊 1,470円

 ベストセラー、同上の『だいじょうぶ 3組』の続編

 発達障害のある転入生に戸惑ったり、万引き や いじめ問題が起こったり、6年3組の卒業までの日々を さわやかタッチで描いたもの。現場の担任にお薦めの一冊である。(2013/4/4)

 

◆ 『らんらんランチ』 ~ 食物アレルギーを学べるカードゲーム ~ 日本生協連出版部 刊 1箱 800円

 順天堂大学医学部公衆衛生学 助教 堀口逸子さんと、そのグループが考案・制作。 同氏は「好き嫌いで食べないこととアレルギーを起こすため、食べてはいけないことの違いを、患者や家族だけでなく、周りの人にも知ってほしかったので商品化した」と言う。

 単なる説明だけでは、忘れがちなため、繰り返し遊べるゲームを考えた。アレルギー症状を起こさずに、いかにバラエティー豊かなランチメニュー(和食、洋食、中華など)を揃えるかを競うカードゲーム。

 3~5人で遊び、使うカードは2種類70枚。小麦や卵などアレルギー症状を起こすアレルゲンが1種類ずつ書かれたカード「アレルゲンカード」と、ハンバーグやエビチリなど料理名が書かれた「メニューカード」がある。 遊ぶルールは各プレーヤーには、「アレルゲンカード」が配られる。その後、メニューカードを選んだり交換したりして、5日分のランチメニューを作る。

 今回のお薦めは、[Books]というよりも、[教材]として紹介した。教室で使ってみてはいかがだろう。(2013/2/15)

 

◆ 『新装版 たちまち字が上手くなる本 ~ 今こそ高まる「手書き」の価値 書き文字上達のコツ ~』 山下 静雨 著 土屋書店 刊 1,200円

 ペン字界の第一人者として広く活躍する、山下 静雨氏によるロングセラーの新装版。

 漢字・ひらがな・行書・実用文書など、それぞれの上達のコツを わかりやすく教えてくれる内容。巻末の[練習帳]には、本文から抜粋した美しい手本を収録してある。 IТ時代の今だからこそ、上手な手書き文字には価値がある。1週間で学び1カ月練習すれば達筆になるという。

 特に、子ども達の文字書きの模範となるべき教師は、読みやすい文字書きができないと尊敬されない。悪筆だと自認している教師には、お薦めの一冊。(2013/1/20)

 

◆ 『季刊 理科の探検 (冬号)』 (株) SAMA企画 刊 1,400円

 編集長 左巻伸男氏(法政大学教授)と、全国180人の仲間で企画・編集している、理科好きの(理科好きになりたい)大人の季刊雑誌。

 ◎ 冬号の内容=特集:地球からの贈り物 ─ 鉱物の魅力

 ◎ 既刊の内容=夏号 特集1:元素周期表の世界 特集2:根本から知ろう ─ 細胞とDNA 別冊 丸ごと自由研究号

 ◎秋号=特集1:おうちの電気がわかる 特集2:身近な動物学

 理科を不得手とする先生方には、ためになる一冊。(2012/12/5)

 

◆ 『ソロモンの偽証』 第1部 [事件] 宮部 みゆき 著 新潮社 1,890円

 構想15年、執筆9年、原稿用紙4,700枚分の3部作にわたる大作。

 現実社会で相次ぐ悲惨な事件を前に、事件をテーマにした現代を書くのが辛いと感じる作家・宮部みゆきが描き続けた物語には、今を生きる子ども達に向けた「祈り」とも呼ぶべき、切なる願いが込められている。

 これまで、弱い者、虐げられる人々を温かく見守り、励ましてきた作家らしい思いが、当作にも強く表れている。

 刊行に向けて作品を仕上げていたところ、滋賀県大津市の中学生の自殺の報を知った。第2部 [決意]は9月21日、第3部 [法廷]は10月12日に発売になった。デビュー25周年を迎えた宮部みゆきの、新たな代表作と呼ぶにふさわしい、厚く、熱い物語である。

 ジャンルとしてはミステリー小説だが、14歳の不登校だった中学生の遺体が、雪の校庭で見つかったシーンから物語が展開していく。警察も親も校舎からの飛び降り自殺と判断したが、後にまもなく「数人の生徒が彼を突き落すのを目撃した」という告発文が届いたことから状況が一変する。

 何も知らされない生徒たちは、たまりかねて女子生徒が「自殺の真相を探る」ことに挑戦していくストーリー展開。フィクションとして、それぞれの生徒の家庭の様子なども描かれている。

 現実味を帯びた内容は、多くの教師の胸に迫る3部作である。(2012/10/20)

 

◆ 『国民の修身』 渡部 昇一 監修 産経新聞社出版 刊 1,050円

 「修身」とは、戦前の小学校で教えられていた、いわば現代の「道徳」にあたる科目である。60歳代前の者には「修身」とは、どういう科目だったのか理解できる人は少ないであろう。

 本書を監修したのは、専門の英語学以外に歴史論、政治・社会評論を多数著わしている、上智大学名誉教授である。氏は保守系オピニオン誌である「正論」「諸君」「WiLL」などへの寄稿が多いので有名。

 戦前の小学校1~3年生の修身教科書を当時の雰囲気を残しつつ、現代でも読みやすいように編集し、現代語訳とともに掲載している。忘れられようとしている、かっての正しい(?)日本人の姿が、ここにあるとしている。

 内容は、「二宮金次郎」「三本の矢」の話の元となったエピソードなど、昔の日本人なら誰もが知っていた話が多数掲載されている。

 子どもたちの道徳教育に携わる教師は、これらを古臭いと決めつけず、温故知新の視点で一読するのも価値がある一冊である。なお、日本図書館協会が選定図書にしており、売れ切れ店が続出したことで一層人気が高まった本でもある。(2012/8/17)

 

◆ 『辞書に載らない日本語』 北原 保雄 編著 大修館書店 刊 840円

 2012年5月18日は語呂合わせで、「ことばの日」(5,10+8)だそうだ。

 本書は、永井荷風が80年前に日記に記した<当世青年男女の用語>の最新版である。

 いまの季節は、山間では新緑が目に鮮やかに映える時、街には”言の葉”の若葉が揺れている。大人たちも、この若葉を噛んでみてアタマを柔らかにしてみては。(2012/5/18)

 

◆ 『日本語の作文技術』 本多 勝一 著 朝日文庫/朝日新聞社 刊 588円

 著者は、ジャーナリストとして名をはせた文筆家である。

 「句読点のうちかた」「修飾の順序」「助詞の使い方」など、日本語を書くための基本的な技術が網羅されている。

 本書は30年前に出版されたが、今も「お手本」として文筆家の座右の書となっている。

 論理的な日本語の書き方の法則を数式のように示しているので、わかりやすいと評判の一冊である。(2012/4/15)

 

◆ 『監督心』 ~ 高校球児を心からヤル気にさせるリーダーたちの知恵 ~ 保坂 淑子 著 実業之日本社 刊 1,400円

 著者の保坂淑子さんは、毎週のように各地の高校野球部を取材してきた雑誌記者である。

 選手たちを1つに束ねて、同じ方向に向かって歩かせるために野球部の監督は、どんな工夫をしているのかを分析している。また、選手たちを次の人生へ羽ばたかせることを目標に、生活の中でヤル気を引き出そうと懸命に頑張っている姿を描いている。

 一人の人間として、しっかり成長してほしいと選手を厳しく見守る「監督心」には、「親心」と同様、打算のない愛情が満ち溢れているのが読み取れる。

 本書では、高校野球の監督15人のユニークな指導法を紹介している。学校の教師、保護者をはじめ、21世紀の子どもと接している大人たちは、どう叱っていいのか、どんな夢をもたせたらいいのか等 多くの悩みを抱えている。さまざまな実践例は、学校現場でも即実践できるヒントになる一冊である。(2012/3/29)

 

◆ 『世界で勝負する仕事術』 竹内 健 著 幻冬舎新書 819円

 著者は東芝で、携帯電話やデジカメなどに欠かせないデータの記憶に関わる電子部品「フラッシュメモリー」の開発に携わり、アメリカ・スタンフォード大学でMBA(経営学修士号)を取得した。帰国後はアップル、インテル、サムスンなどの企業と半導体ビジネスの最前線で渡り合い、現在は東京大学大学院準教授。

 異色の経歴を有する氏は、本書の中で「世界一を目指さなければ、生き残ることはできない」「走りながら考える」「仕事の隙間部分を見つける」などのヴィヴィットな信念を吐露している。2月27日、我が国有数の半導体メモリー世界3位の電子部品メーカー「エルピーダメモリ」が破たんすることが明らかになった。 韓国企業に敗れたのだ。

 有能な人材の流出が続き、ものづくり大国の危機が叫ばれている中、氏の言葉は即現実となったのは皮肉なことだ。このことは日本企業や社会への真摯な忠告であり、鋭い警告でもある。

 グローバル社会で日本人が生き残るためには、「修羅場をくぐり抜けるしかない」と言い切っている本書は単なるビジネス書とは一線を画すものである。一読を勧めたい。(2012/3/7)

 

◆ 『教師の悩みとメンタルヘルス』 諸富 祥彦 著 図書文化社 1,680円

 著者である明治大学教授の諸富氏は、長年心理カウンセラーとして現場の臨床カウンセリングに携わってきている。

 子ども・保護者・同僚との関係や多忙感といった、教師が抱える問題点と対応策や「うつ」の予防と対策を中心にした教師のメンタルヘルス等について「悩める教師を支える会」代表を10年務める著者が具体的にアドバイスした内容である。(2012/1/13)

 

◆ 『教師のための なるほどQ&A』 ~すぐ役立つ54のアイデア~ 全国連合退職校長会 著 東洋館出版 刊 1,995円

 執筆陣は、各都道府県退職校長会長の推薦による、各分野のベテランとして活躍してきた校長経験者。長い現場での実践の中で「自分ならではの経験と知恵」を持っている。

 実践に裏付けられた経験と知恵を活かして、日々様々な課題に直面し、悩みながら現場で尽力している現職の教師のために書かれた、仕事が楽しくなる54のアイデアが載っている。

 内容は、第1章; 「子どもの心をとらえる授業の技」、第2章 「 目配り、気配り、心配りの生活指導」、第3章;「 活気と笑顔あふれる学級づくり」、第4章;「 若手とベテランによる教師の輪」など、6章にわたりQ&A形式で構成されている。

 特に、若手と若手を指導する中堅・幹部の先生方に役立つ1冊である。(2011/12/16)

 

◆ 『すぐやる人の実践☆段取り術』 学研パブリッシング 刊 880円  残業が熱意の表れとされる時代は終わり、仕事の生産性を上げて定時に帰る「段取り」の良さが、評価される時代になった。また残業を認めない企業も出てきている。

 本書は、仕事の効率化を図る方法を紹介している。会議資料や報告書などをスマートフォン(高機能携帯電話)に保存しておいて、通勤途上や外出先で確認したり、朝少し早目に出勤して混み合うコピー作業をいち早く済ませるコツなど、段取りのPDCAで仕事が20倍加速すると明言している。また、仕事を速めるアイデアや文具類についても記載している。

 学校現場において昨今では事務処理量が多く、勤務時間外で事務処理に当たる管理職を含めた教職員が、参考にしたい一冊である。(2011/11/16)

 

◆ 『 なでしこ力 』 佐々木 則夫 著 講談社 刊 1,200円

「なでしこジャパン」が、ワールドカップで世界一になる以前に、本書が刊行されていたのだから、出版担当者の先見の明には驚かされる。

 著者は、1958年生まれ。NTT関東サッカー部でプレーした後、2007年に なでしこジャパンの監督に就任した。

 このティームの平均年齢が25歳弱、この若い選手を率いるに当たり、彼女たちとは「上から目線」ではなく、「横から目線」で付き合うことを心掛けたという。

 書中で、監督の仕事は、あくまでも選手の長所を見抜き、それを本人に伝え分からせることだと述べている。

 なでしこ流の育成は、教育の世界でも、何かと参考になる一冊である。(2011/8/15)

 

◆ 『 言葉の力 』 猪瀬 直樹 著 中公新書ラクレ 740円

 ことば は生きていると言われように、時代とともに流行り廃りがある。

 この頃 特に、ヤング世代などは自分の気持ちや感想を、ごく短いフレーズで表現して、それで良しとする傾向が非常に気になる。例えば、「スゴーイ!」や「ヤバイ」の多用である。これで事足りる人生を送り続けるとしたら、彼等の語彙(ボキャブラリ)が貧弱になるのは必定である。

 作家である猪瀬氏は、2007年に石原知事から請われて副知事に就任、辛口のコメンテータとしてもファンが多い。

 本書の帯には、「国難(東日本大震災・原発事故など)の今こそ、日本人の思想が問われている。言葉を鍛え、ヴィジョンを示せ! と標記している。

 東京都が、いま進めている「言語力再生」の目的とメソッドを紹介している。また、これからのグローバル時代を生き抜く、コミュニケーション力とは何かを、氏独特の視点で説いている。いわば猪瀬流のノウハウだ。

 特に、教育に関わる内容として、読書療法のすすめ、「読み聞かせ」の効用、書評合戦の魅力等々、本書の第3部で未来型読書論を展開している。

 「活字離れ」防止のための秘策やEbook(電子書籍)は、日本にとって黒船か(?)も、教育に携わる者にとっては参考になる内容である。(2011/8/4)

 

◆ 『 三陸海岸大津波 』 吉村 昭 著 文春文庫 460円

作家の吉村 昭が、41年前に発表した「三陸海岸大津波」(文春文庫)が東日本大震災後、静かな反響を呼んでいる。

 明治29年、昭和8年、昭和35年の、3回にわたった三陸沿岸を襲った津波被害を丹念に調べた同作は、1970年に中公新書で発表。その後、文庫本化され、今回の大震災後に4回にわたって増刷、計20万部が発行された文庫本である。

 テレビ等の映像によるものとは、また違うリアリティが読む者を襲う。「過去の体験に学ぶ」ということは、どういうことなのか、と同時に活字のもつ可能性を教えてくれる希有な記録作品といえる。

 著者の妻で、作家の津村節子さんは、増刷分の印税を被災地に寄付し、復興に役立てたいと語っている。間接的な被災地支援にもなる本書の講読を、ぜひ勧めたい。(2011/6/1)

 

◆ 『 帰宅難民 なう 』 難民 A 著 北辰堂出版 刊 1,470円

去る3月11日の東日本大震災当日、東京・文京区の関口1丁目から大田区の大森まで歩いた、帰路18キロを避難者目線で綴ったエッセイである。

 あの日は、多様な立場の人たちが多様な動きをして、ようやく帰宅した者、どこ そこで一夜を明かした者、呑み明かした者、校内で児童生徒に対応した教職員。70日を過ぎて それぞれの思いが交叉する。

 本書の中で、「道標としてのコンビニ」「水・食料を獲得するコンビニ」「街中で一番早く売れ切れた品物」「不安になるなら新聞の号外は後で読め」等の提案や、「職場にぜひ置いておきたい物リスト」なども明記されてあり、大都会における災害時緊急マニュアル付の、帰宅者支援向けのエッセイといえよう。

 震災後2ヶ月を過ぎた今だからこそ、被災時を冷静に振り返り、今後の教訓として生かすことができる、「エッセイ風実用書」。

 今後予想される「東海大地震」に備えて、都会人が目を通しておくべき一冊になろう。(2011/5/20)

 

◆ 『はやぶさ」式思考法 ~ 日本を復活させる24の提言 ~』 川口 淳一郎 著 飛鳥新社 刊 1,365円

 著者 川口淳一郎氏は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授で、小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトマネージャー。

 7ヵ年にわたって宇宙空間の旅と続けた「はやぶさ」を奇跡的に帰還させた、川口教授が宇宙史に残る偉業から導き出された、日本の今を変える24の思考法を一冊の本に まとめたものである。

 一部をダイジェストすると、

 提言1の「減点法をやめて、加点法にしよう」では、“失敗”をカウントするな! “成功”をカウントする加点法こそが、日本の閉塞感を打ち破る、という視点で書かれたいる。

 提言2の「教科書には過去しか書いていない。答えの有無しか分からない課題が、ごろごろしている現実において、[教科書]は新たな発想を提供するものではない」という思考が記述されている。日本の意気消沈気味な大人が読むと元気が出てくる一冊だ。(2011/2/15)

 

◆ 『第3版 悪 文』 岩淵 悦太郎 編著 日本評論社 1,200円

 本書は、1960年に第1版が刊行され、それ以来2010年11月まで第3版21刷となる、静かなロングセラー本(約47,500部)である。

 最近の役所の文書などは、かなり読みやすい文章になってきたが、裁判所の判決文は、「悪文のチャンピオン」だと筆者は断じている。

 本書は、公文書や広告文、新聞記事、小学生の作文などから読みにくい文章の例を挙げて、どこが悪いのかを具体的に解説している。

 悪文の一例として、歯切れの悪い文がある。一文が長かったり、段落の分け方が まずかったり、構成に問題があったりと、悪文の要素は様々である。

 また、筆者は、接続助詞の「が」を多用することにより、文が長くなると指摘する。やたら漢字を使うのも問題で、少し平易な表現にすると読みやすい文章になる。バランスが大切。読みやすい文章は、読み手に負担を かけない文章というコンセプトで書くことが大切だという。

 学校管理職は、後進を育成するという使命があるが、校長・副校長の選考試験受験者の論文指導の際、参考になる一冊である。(2010/11/22)

 

◆ 『できる人の教え方』 安河内 哲也 著 中経出版 刊 1,680円

  ~やる気を引き出す! 分かってもらう! 力を伸ばす!~

  予備校講師歴20数年の筆者は、数多くの社会人、学生を教え、周囲に見放されて伸び悩んでいる人のやる気を引き出してきた指導法を20項目にわたって紹介している。教える時、何を どうすればいいか、相手の「満足度×伸び率」を高める指導方法も初公開。著書の中で、さまざまな組織において、「リーダー」と呼ばれ、尊敬されている人は例外なく「人を教えること」が上手だと断言している。

  また筆者は、教えることに関して、数多くの失敗体験や試行錯誤の体験を持っている。「教育専門書」には、決して載っていないような、「教えるコツ」を収録してあるのが特長でもある。多くの人の前に立つ管理職には、大きなヒントになるだろう。

 

◆『日本語が亡びるとき』 水村 美苗 著 筑摩書房 刊 1,800円

 世界の言語を分類すると、普遍語(英語など)、国語(日本語など)、現地語に分けられる。

 10数年の米国生活を経験した著者は、「インターネットが普及し、英語が普遍的な言語として席巻していく中で、知的刺激に満ちた書き文章は、いずれ英語でしか書かれなくなるのではないか」と、警鐘を鳴らしている。

 日本語が、100年以上にわたり積み上げてきた文化遺産としての力が、継承されなくなることを憂いている、いわゆる「憂国語の書」である。

 これまで学校教育の中で、明治以来の日本近代文学が育んできた豊かな日本語の継承こそが大切であると、著者は提言している。

 折しも、文部科学省が、「小学校への英語活動導入、高校の英語を使った英語の授業」など、一連の実用英語を重視した方針とあいまって、言語活動の一層の充実を打ち出したタイミングも、微妙に一致するのである。

 

◆『自己チュー親子』 諏訪 哲二 著 中央公論新社 刊 中公新書 798円

 「自己チュー」という妙な造語が通用してから数年たつが、この造語は、「自己中心的」を縮めて「自己中」⇒「自己チュー」と変化し、流行語として使われている。周囲の人間を無視または軽視するなど、いわゆる「わがまま」などの意味にも使われている。この場合は、「利己的」を含めた意味で使われることが多い。

 今や親子そろっての「自己チュー」が存在する世の中。県立高校の教師経験を持ち、「プロ教師の会」代表、日本教育大学院大学客員教授を務める著者は、モンスターペアレンツに向き合い、現代の家族を解読した注目の一冊である。また、有名人親子やあの忌まわしい秋葉原殺傷事件など最近の事例も引用して分析した論考書である。

 日頃から、学校に対して自己中心的・利己的な、しかも理不尽な要求などを執拗に繰り返す保護者との対応に、エネルギーを費やす学校管理職にとっても参考になる。

 

◆『秋田の子供は、なぜ塾に行かずに成績がいいのか』 浦野 弘 著 講談社+α新書 880円

 長年、秋田県の学校教育にかかわってきた秋田大学 浦野 弘教授が、全国学力調査で子ども達がトップクラスという結果を出した背景を解明している。

 特に、全国的に注目を浴びた好成績の根底にあるのは、学校現場の粘り強い取り組みに加え、子ども達の規則正しい生活(早寝・早起き・朝ごはん・家での予復習・授業に集中など)や、地域や家庭での豊かな人間関係のような我が国の伝統的な当り前の生活環境と学習環境があった、と浦野教授は分析している。

 どちらかというと、保守的な?スタンスの教育観に基づいた内容であるが、昨今、結果を重視する公教育を求められている学校管理職にとって、なるほどと思わせる点が多々ある。これからの、経営の参考になる一冊である。

 

◆『子供をやる気にさせる、4つのスイッチ』 横峯 吉文 著 日本文芸社刊 1,365円

 著者は、通山保育園を設立後、ユニークな学育法を実践、その後も3つの保育園を設立している。氏は、「ヨコミネ式読み・書き・計算」で面白いほど伸びていく幼児の成長を、これまでのデータから分析し、幼児期にある子供をやる気にさせる4つのスイッチとして、●子供は競争したがる ●子供は真似したがる ●子供はちょっとだけ難しいことをしたがる ●子供は認められたがる、を挙げている。

 また、いまの子供を勉強好きに変えるには『天才は10歳までにつくられる』という、著書の中で自説を述べている。

 幼児教育や小学校低学年の指導に携わる人にとって、大いに参考となる一冊である。

 

◆『問題社員の取扱説明書』 田北 百樹子 著 PHPビジネス新書126 840円

 著者は、自覚やモラルに欠けた若手社員を「シュガー社員」と名付けたことで有名になった、労使トラブルの専門家であり、現職は社会保険労務士。

 近頃の若者の特徴的な行動が、会社の現場に重大な影響を及ぼしてきているという。 常識が通じない、反省しない、WEBネットに自社の悪口を書き込む、重要なことを上司に言わない、引継ぎもせずに突然退社するetc….。そんな社員に限って、なぜか口だけは達者で上司が やり込められることが、しばしばあるという。

 そこで、「取り扱い」すなわち対処法だが、「それくらい常識」という理論が通じないのだから、予めルールを明文化しておくことが大事と、筆者は指摘する。また、問題(M)社員を叱る際は、厳しい言葉は避け、指導内容を記録して証拠を残しておくことが大切、これはM社員が訴訟を起こした際に、不利にならないためでもある。

 この問題社員を、問題(M)教員に置換すると、教育現場に共通するものが多い。指導力不足教員が、教育現場でM教員と ささやかれ、子どもの学習意欲を そぎ、学級生活や学力に重大な影響を与える。現場での対応は、「認定」等を求めることがあるが、容易なことではない。そのためには、膨大な資料を用意しなければならないからだ。

 情報化社会におけるM社員の理論武装は、強力になっていることを勘案すれば、会社側も的確な理論武装をしておくことが、今の時代に求められている。 学校経営者にとっても、大いに参考になる一冊である。(2010/3/28)

 

◆『日本の子どもは自尊感情は なぜ低いのか』 ~児童精神科医の現場報告~ 古荘 純一 著 光文社新書 840円

 子どもは明るく元気がいいというのが通念だが、最近は、孤独、疲れる、将来が不安、毎日が楽しくない、居場所がないと感じている子どもが、増えている。

 また、子どもの「うつ」にも、世間の注目が集まっている。 長年、児童精神科医として学校現場からの相談を受けてきた著者が、多様な調査結果や診療、学校現場での豊富な事例をもとに、自尊感情という視点から、子ども達の現況を見つめ直し、大人たちの 特に教師のあるべき姿や とるべき行動について、貴重なヒントを与えてくれている。

 著者には、将来に夢をもち、明るく元気に、皆と仲良く、勉強したり遊んだりする本来の子どもの姿を、取り戻したいという強い願いを有している。それには、なんといっても教師の頑張りが必要である。本書は、そのような教師を支援する、きわめて有意義な一冊である。(2010/6/4)

 

◆『考えない練習』 小池 龍之介 著 小学館 刊 1,300円

 なんともユニークな書名に、眼がいく本。

 著者は、東京都内の月読寺住職・正現寺副住職を務める、32歳の若手僧侶である。

 僧職の立場で著しているので、[煩悩]という単語がキーワードになっている。

 煩悩 ━ 由来は仏教語からきており、衆生(一切の人類や動物)の心身を煩わし、悩ませる一切の妄念をいう。(※広辞苑から)

 昔から、人間には百八の煩悩や八万四千の妄念があると言われているが、この煩悩を断じた境地が悟り《菩提》であるとされているが、凡人には、この煩悩克服の道は険しい。

 著者は、人間の脳が いかにネガティブなことを考えがちであるかを指摘している。それを、どう解消し、自身の心を どうコントロールしていけばいいのか、を論述している。

 一例を紹介すると、人間は百八の煩悩を持つと比喩されるが、基本煩悩である怒り、迷い、欲などに翻弄されないために、例えば「こいつメ!」と思った時に、「今、この人は怒っているようだ」と言うように、自身の心を客観的にみて、そのまま受け入れることがポイントだという。ネガティブなことを、繰り返して考えないように、気持ちを切り替えるのが大事である、と指摘している。

 昨今の世情を鑑みるに、学校教育に携わる者にとっても、悩み多き時代であるが、『考えない練習』は大いに参考になる一冊になるだろう。(2010/8/22)

 

◆『デジタル教育は日本を滅ぼす!』 田原 総一朗 著 ポプラ社 刊 1470円

 文科省は、小中学校で使用する教科書をデジタル化する計画に関する検討を始めている。世界の先進国、とりわけ米国の数州では、デジタル教科書導入の実施計画を策定している。

 マスメディア界で多くの発言や提言をしている政治評論家の田原氏が、文科省の同方針に対して[緊急の提言]として、ポプラ社から8月28日に出版されたものである。本書では、「これまで正解だけ?を求めてきた日本の教育は、議論とコミュニケーションをもてない大人を育ててきた。デジタル教育は、その日本人の欠陥を助長するだけである。 正解と間違いだけを教える教育は、もういらない。

 便利なことが、人間を豊かにすることではない。経済効率と利便性の追求により、本当に「豊かな人間性」を失うことはないか。」そして、 「デジタル教科書は、日本の子どもたちから議論とコミュニケーションを奪ってしまう可能性が大きい。今こそ、真剣に我が国の教育を考えるべきである。今こそ、教科書のデジタル化について議論するときである」と、著者は警鐘を鳴らすとともに、大人たちが真摯に議論すべきだという提言をしている内容である。

 文部行政が導入を決めるとしても、デジタル教科書を使用することになる当事者側として、管理職や教員は今後どのように対応していくのかが求められる。一読に値する一冊である。(2010/9/1)

 

◆『理科系冷遇社会』 林 幸秀 著 中公新書 ラクレ366 903円

 大学の理系の学生は、文系より学習(授業)時間が長く、実験など必須科目が多い。学費も文系より高い。また、就職時には、いわゆるツブシが効かず、就職先の選択肢が少ない。例えば、研究職を目指して博士号を取得した16000人余が、定職に就けないという現実がある。彼らの多くは、奨学金などで借金を抱えるという、科学を志した人たちの悲しい現状を世に問うている。

 筆者の林幸秀氏は、1948年生まれで、米国イリノイ大学大学院(工業工学専攻)修了後、国の科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター上席フェローの経歴を持つ、いわば科学技術行政に携わってきた文部省幹部と言えよう。

 氏は、本書の中で自らの責任を認めた上で、理系冷遇が日本の技術力と国際競争力を低下させている、という危機感を抱いたので筆を執ったと述べている。

 更に、「今後、何の手を打たねば日本の科学技術は沈没する」と、警鐘を鳴らしている。先に鈴木 章、根岸 英一両氏が受賞した、ノーベル化学賞の功績は米国で築き上げたということを重ねると、一層、現実感が湧いてくる一冊である。また、理科系の人材が育ちにくい現状に対して、鋭い分析を加えた警世の書である。(2010/10/26)

 

                                        以 上

 

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